複素解析におけるリウビルの定理の証明
定理 1
関数 f $f : \mathbb{C} \to \mathbb{C}$が全ての$z \in \mathbb{C}$に対して$|f(z)| \le M$を満たす正の数$M$が存在する場合、$f$は定数関数である。
解説
$f$が全解析関数であるとは、複素平面全体で解析的であるという意味だ。対偶命題として言うならば、定数関数でない場合その絶対値が有界boundedにならないということだ。例えば$\sin$は定義域が実数集合の場合、$-1$と$1$により明らかに有界だが、複素解析では $$ | \sin i | = | i \sinh 1 | = \sinh 1 > 1 $$ により有界ではないことが分かる。
証明
$\mathscr{C}$を半径が$r$で中心が$\alpha$の円$ | z - \alpha | = r$とする。$f$は全解析関数なので、全ての点$z=\alpha$での微分係数$f ' (\alpha)$を考えることができる。
コーシーの積分公式: $$f^{(n)} (\alpha) = {{n!} \over {2 \pi i }} \int_{\mathscr{C}} {{f(z)} \over { (z - \alpha)^{n+1} }} dz$$
微分に関する一般化されたコーシーの積分公式から$n=1$ならば $$ |f ' (\alpha)| = {{1} \over {2 \pi}} \left| \int_{\mathscr{C}} {{f(z)} \over { (z- \alpha)^{2} }} dz \right| $$
ML補題: $|f(z)| \le M$を満たす正の数$M$と$\mathscr{C}$の長さ$L$について $$ \left| \int_{\mathscr{C}} f(z) dz \right| \le ML $$
$|f(z)| \le M$であるから$\displaystyle \left| { {f(z)} \over { (z - \alpha)^2 } } \right| \le { {M} \over {r^2} }$であり、円$ | z - \alpha | = r $の周囲が$2 \pi r$であるため、ML補題を用いると $$ |f ' (\alpha)| = {{1} \over {2 \pi}} \left| \int_{\mathscr{C}} {{f(z)} \over { (z- \alpha)^{2} }} dz \right| \le {{1} \over {2 \pi}} \left( { {M} \over {r^2} } \right) 2 \pi r = { {M} \over {r} } $$ この不等式はどの$r>0$に対しても成り立ち、故に$|f ' (\alpha)| = 0$、すなわち$f ' (\alpha) = 0$である。全ての点$z=\alpha$で$f ' (\alpha) = 0$であるから、$f$は定数関数である。
■
参照
Osborne (1999). Complex variables and their applications: p94. ↩︎