e^-x^2型の定積分、ガウス積分、オイラー-ポアソン積分
定理
ガウス関数 $f(x) := e^{-x^2}$ の全範囲に及ぶ積分は、以下の通りである。
$$ \int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2} dx= \sqrt{\pi} $$
説明
物理学者ケルビンは、「この積分を当たり前だと思う人は数学者だ」という言葉を残したそうだ。他にも ガウス積分、または オイラー・ポアソン積分 などとも呼ばれる。
高校生にとっては衝撃的な積分で、特に統計学では非常に重要な積分でもある。それもそのはず、高校の範囲では原始関数を求めることができず、計算が不可能なのに、統計の部分では正規分布の確率を暗黙に使っているからだ。
証明
戦略: $x$ と $y$ を互いに独立させ、極座標系に変換して閉区間の積分に変える。高校生レベルで理解できると言われるパップス・ギュルディンの定理を通じて、回転体の体積を求める方法で証明する方法があるが、本質的にこの証明と同じであり、この方法も異常積分を含んでいるため、高校生レベルとは言いがたい。
$\displaystyle I = \int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2} dx$ とすると、$\displaystyle I = \int_{-\infty}^{\infty} e^{-y^2} dy$ としても表せる。$x$ と $y$ は独立しているので、
$$ \begin{align*} I^2 =& \int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2} dx \int_{-\infty}^{\infty} e^{-y^2} dy \\ =& \int_{-\infty}^{\infty} \int_{-\infty}^{\infty} e^{-( x^2 + y^2 ) } dxdy \end{align*} $$
極座標系に変換すると、
$$ \begin{align*} I^2 =& \int_{0}^{2 \pi} \int_{0}^{\infty} e^{-r^2 } r dr d\theta \\ =& \int_{0}^{2 \pi} \left[ {{-e^{-r^2}} \over {2}}\right]_{0}^{\infty} d\theta \\ =& \int_{0}^{2 \pi} {{1} \over {2}} d\theta \\ =& \pi \end{align*} $$
従って、
$$ I =\sqrt{\pi} $$
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帰結
半直線上の異常積分
$$ \int_{0}^{\infty} e^{-x^2} dx= {{\sqrt{\pi}} \over {2}} $$
積分範囲が $0$ から $\infty$ までの場合、極座標は使えない。しかし、ガウス関数の形を見れば、$x=0$ に対して偶関数なので、計算せずとも半分になると予想できるが、範囲が無限に長い異常積分だからこそ、正確に確認しよう。
証明
$$ \int_{0}^{\infty} e^{-x^2} dx $$
$x :=-y$ のように置換すると、
$$ x \rightarrow 0,\ y \rightarrow 0 \\ x \rightarrow \infty,\ y \rightarrow -\infty \\ x^2=y^2 $$
$dx=-dy$ なので、
$$ \int_{0}^{\infty} e^{-x^2} dx = -\int_{0}^{-\infty} e^{-y^2} dy=\int_{-\infty}^{0} e^{-y^2} dy $$
積分変数は定積分に影響を与えないので、$\displaystyle \int_{-\infty}^{0} e^{-y^2} dy=\int_{-\infty}^{0} e^{-x^2} dx$ と書けて、従って、
$$ \int_{0}^{\infty} e^{-x^2} dx + \int_{-\infty}^{0} e^{-x^2} dx= 2\int_{0}^{\infty} e^{-x^2} dx=\int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2} dx $$
上記の結果を使用すると、
$$ \int_{0}^{\infty} e^{-x^2} dx=\frac{1}{2}\int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2} dx=\frac{1}{2}\sqrt{\pi} $$
一般化
以下のように一般化された公式が広く用いられている。
$$ \int_{-\infty}^{\infty} e^{-\alpha x^2} dx= \sqrt{\dfrac{\pi}{\alpha}} $$
参照
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