カオス理論におけるマップの共役
概要
カオス理論においてマップの共役は一種のアイソメトリやアイソモルフィズムと似ており、実のところ、より一般的な力学系の文脈ではホメオモルフィズムそのものである。
1 教材によって完全に同じではないかもしれないが、用途は正確に同じである。数学でやることが皆そうであるように、計算が容易なところである性質が成り立つことを確認したうえで、実際に証明が必要なところへその性質を保存させることである。
定義2
$X$上で定義された二つのマップ$f, g : X \to X$に対して$C \circ f = g \circ C$を満たす連続全単射$C$が存在すれば、$f$と$g$が共役conjugateであるという。
定理3
すべての$x$に対して$g \left( C(x) \right) = C \left( f(x) \right)$であるとしよう。
- [2]: $f$の周期-$k$軌道で$C’ \ne 0$ならば $$\left( g^{k} \right) ' \left( C (x) \right) = \left( f^{k} \right) ' (x)$$
説明
上の二つの定理は、共役性conjugacyがマップを繰り返し取ることや微分に関係なく保たれることを意味する。これはすなわち、一つの系でリャプノフ指数を求めるのが容易であれば、それと共役な系でもリャプノフ指数を求めるのが容易だということである。
例4
これに関するよい例が、まさにロジスティックマップがカオス的な軌道を持つことを示すことである。

例として、テントマップ$T : [0,1] \to [0,1]$は$T(x) = 1 - | 1 - 2x|$のように定義され、ロジスティックマップ$G$は$a=4$のロジスティックファミリーとして$G (x) := g_{4} (x) = 4x(1-x)$のように定義される。これに対して
$$C(x) : = {{ 1- \cos \pi x} \over { 2 }}$$
は$T$と$G$が共役になるように存在する連続全単射である。実際に計算してみると
$$G(C(x)) = \sin^2 \pi x = C ( T(x) )$$
となることを容易に確認できる。

上の図は、テントマップを反復的に取ったときのグラフと$y=x$の交点を見つけることで$T$の周期-$k$点を見つけ出す過程を表している。これを通じて、$T$はすべての$k \in \mathbb{N}$に対して周期-$k$軌道が存在することがわかり、$C$の存在性と定理1によって$G$もまたすべての$k \in \mathbb{N}$に対して周期-$k$軌道が存在することがわかる。
一方、$[0,1]$のほとんど至るところで$\ln \left| \left( T^{k} (x) \right)' \right| = \ln 2 > 0$であるから、$T$の周期点$x$はソースであり、$G$の周期点$C(X)$もまたソースである。したがって、$T$の周期軌道$\left\{ x , \cdots , \right\}$に対応する$G$の周期軌道$\left\{ C(x) , \cdots \right\}$は漸近的に周期的ではありえず、定理[2]によってリャプノフ指数が正であることを保証できる。
これは結局、ロジスティックマップがカオス的軌道を持つことを意味する。このような間接的な証明も難しいと感じるかもしれないが、ただロジスティックマップがカオス的軌道を持つことを直接証明するよりははるかに容易であろう。
証明
定理1の証明
$C \left( f^{k-1} (x) \right) = g^{k-1} \left( C (x) \right)$が成り立つと仮定すれば
$$ \begin{align*} C \left( f^{k} (x) \right) =& g \left[ C \left( f^{k-1} (x) \right) \right] \\ =& g \left[ g^{k-1} \left( C (x) \right) \right] \\ =& g^{k} \left( C (x) \right) \end{align*} $$
一方、$k=1$のとき$f^{1} (x) = x$であるから
$$ g \left( C(x) \right) = C \left( f(x) \right) = C (x) $$
数学的帰納法によりすべての$k \in \mathbb{N}$に対して
$$ C \left( f^{k} (x) \right) = g^{k} \left( C (x) \right) $$
$x$が$f$の周期-$k$点であれば$f^{k} (x) = x$であるから
$$ g^{k} \left( C (x) \right) = C(x) $$
したがって$C(x)$は$g$の周期-$k$点となる。
■
定理[2]の証明
$x$が$f$の周期-$k$点であるとしよう。
定理1の証明から
$$ g^{k} \left( C (x) \right) = C \left( f^{k} (x) \right) $$
連鎖法則により
$$ \left( g^{k} \right)' \left( C(x) \right) C ' (x) = C ' (x) \left( f^{k} \right)' (x) $$
$C ' (x) \ne 0$であるから両辺から消去すれば
$$ \left( g^{k} \right)' \left( C(x) \right) = \left( f^{k} \right)' (x) $$
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コード
次はテントマップ$T$とロジスティックマップ$G$、$T^{k}$のグラフを描いてくれるコードをR で書いたものである。
tent<-function(x) {1 - abs(1-2*x)}
logistic<-function(x) {4*x*(1-x)}
win.graph(8,4); par(mfrow=c(1,2))
plot(tent,main='Tent Map T')
plot(logistic,main='Logistic Map G\')
win.graph(9,3.5); par(mfrow=c(1,3))
plot(tent,main='T',xlab='x',ylab='y'); abline(0,1)
plot(seq(0,1,len=1000),tent(tent(seq(0,1,len=1000))),main='T^2',type='l',xlab='x',ylab='y');abline(0,1)
plot(seq(0,1,len=1000),tent(tent(tent(tent(tent(seq(0,1,len=1000))))))
,main='T^k',type='l',xlab='x',ylab='y');abline(0,1)
