2次線形微分方程式の2つの解のロンスキアン
定理 1
$y_{1}$と$y_{2}$が二階線形微分方程式$y^{\prime \prime}+p(t)y^{\prime}+q(t)y=0$の解だとする。その場合、
$y_{1}$ と $y_{2}$ のロンスキアンは指数関数形で表される。
$$ W [y_{1}, y_{2}] (t)=c e^{-\int p(t) dt} $$
この時、$c$は$y_{1},\ y_{2}$に依存する定数である。
$W[y_{1},y_{2}] (t)$は、すべての点で$0$であるか、すべての点で$0$ではない。
説明
アーベルの定理Abel’s theoremとも言われる。通常アーベルの定理と言えば、アーベルの極限定理Abel’s limit theoremを指すが、ボイスの常微分方程式教科書では上記の定理をアーベルの定理と呼んでいる。アーベルによって導出されたためにそのように名付けられたと考えられる。
この定理の重点は**2.**である。ロンスキアンが常に$0$または$0$ではないため、$0$ではない一点を見つけるだけで、$W[y_{1},y_{2}]\ne 0$であり$y_{1},\ y_{2}$が独立しており基本解集合を形成していることが分かる。任意の二つの解のロンスキアンを計算して、これが$0$かどうか分かりにくいときは、任意の値(計算しやすい値を選ぶ)を入れて$0$ではないことを示せば、二つの解が独立であることを 示したことになる。
証明
$y_{1},\ y_{2}$は与えられた微分方程式の解であるため、以下が成立する。
$$ y_{1}^{\prime \prime}+p(t)y_{1}^{\prime}+q(t)y_{1}=0 \\[1em] y_{2}^{\prime \prime}+p(t)y_{2}^{\prime}+q(t)y_{2}=0 $$
上の式に$-y_{2}$を掛け、下の式に$y_{1}$を掛けて二つを加えると
$$ \begin{equation} (y_{1}y_{2}^{\prime \prime}-y_{1}^{\prime \prime}y_{2})+p(t)(y_{1}y_{2}^{\prime}-y_{1}^{\prime}y_{2})=0 \end{equation} $$
ロンスキアンの定義により、
$$ W[y_{1},y_{2}] (t)=W=y_{1}y_{2}^{\prime}-y_{1}^{\prime}y_{2} \\[1em] W^{\prime}=y_{1}^{\prime}y_{2}^{\prime}+y_{1}y_{2}^{\prime \prime}-y_{1}^{\prime \prime}y_{2}-y_{1}^{\prime}y_{2}^{\prime}=y_{1}y_{2}^{\prime \prime}-y_{1}^{\prime \prime}y_{2} $$
$(1)$を$W, W^{\prime}$の形で表すと
$$ W^{\prime}+p(t)W=0 $$
これは単純な分離可能な一階微分方程式である。
$$ \begin{align*} \\ && W^{\prime}+p(t)W =&\ 0 \\ \implies && \dfrac{dW}{dt} =&\ -p(t)W \\ \implies && \dfrac{1}{W} dW =&\ -p(t)dt \\ \implies && \ln W =&\ -\int p(t)dt+C \\ \implies && W =&\ ce^{-\int p(t) dt} \end{align*} $$
$W$が指数関数の形であるため、$c=0$ではない限り、決して$0$にはならない。したがって、$W=0$の場合は$c=0$の場合であり、この場合は$t$に関わらず、すべての点で$W=0$である。同様に、$c \ne 0$の場合は、$W$が指数関数の形であるため、$t$に関わらず、すべての点で$W \ne 0$である。
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William E. Boyce, Boyce’s Elementary Differential Equations and Boundary Value Problems (11th Edition, 2017), p117-118 ↩︎