チェビシェフ微分方程式の直列解法
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定義
次の微分方程式をチェビシェフChebyshev 微分方程式という。
(1−x2)dx2d2y−xdxdy+n2y=0
説明
係数に独立変数 xが含まれる形式であり、解がべき級数の形であると仮定すると、解くことができる。チェビシェフ方程式の解をチェビシェフ多項式と言い、解は一般的にTn(x)と表される。
解法
(1−x2)y′′−xy′+λ2y=0
上で示したチェビシェフ微分方程式の解を次のように仮定しよう。
y=a0+a1(x−x0)+a2(x−x0)2+⋯=n=0∑∞an(x−x0)n
このときx=0であるときy′′の係数が(1−x2)∣x=0=1=0であるので、x0=0としよう。すると
y=a0+a1x+a2x2+⋯=n=0∑∞anxn
べき級数解として解法を始めるが、解法の最後に実際にはyの項が有限であることが分かる。今(1)に代入するために、y′とy′′を求めよう。
y′=a1+2a2x+3a3x2+⋯=n=1∑∞nanxn−1
y′′=2a2+3⋅2a3x+4⋅3a4x2+⋯=n=2∑n(n−1)anxn−2
(1)にy,y′,y′′を代入すると次のようになる。
(1−x2)n=2∑∞n(n−1)anxn−2−xn=1∑∞nanxn−1+λ2n=0∑∞anxn=0
一番目の項の係数(1−x2)の括弧を外して整理すると
n=2∑∞n(n−1)anxn−2−x2n=2∑∞n(n−1)anxn−2−xn=1∑∞nanxn−1+λ2n=0∑∞anxn=0
⟹n=2∑∞n(n−1)anxn−2−n=2∑∞n(n−1)anxn−n=1∑∞nanxn+λ2n=0∑∞anxn=0
ここでのポイントはxの次数を合わせることである。残りはすべてxnとして表されるが、最初の級数だけがxn−2で表されているので、nの代わりにn+2を代入すると
n=0∑∞(n+2)(n+1)an+2xn−n=2∑∞n(n−1)anxn−n=1∑∞nanxn+λ2n=0∑∞anxn=0
二番目の級数がx2項から始まるので、残りの級数からn=0,1の項を取り除いて、定数項は定数項同士、一次項は一次項同士をまとめると
[2⋅1a2+λ2a0]+[3⋅2a3−a1+λ2a1]x+n=2∑∞[(n+2)(n+1)an+2−n(n−1)an−nan+λ2an]xn=0
上の式が成り立つためには、すべての係数が0でなければならない。
2⋅1a2+λ2a0=0
3⋅2a3−a1+λ2a1=0
(n+2)(n+1)an+2−n(n−1)an−nan+λ2an=0
それぞれを整理すると
a2a3an+2=−2⋅1λ2a0=−3⋅2λ2−12a1=−(n+2)(n+1)λ2−n2an
漸化式(5)を得たので、a0とa1の値さえ分かれば、すべての係数が分かる。(3),(5)から偶数次の項の係数を求めると
a4a6=−4⋅3λ2−22a2=4!λ2(λ2−22)a0=−6⋅5λ2−42a4=−6!λ2(λ2−22)(λ2−42)a0⋮
ここでn=2m(m=1,2,3,⋯)とすると
an=a2m=(−1)m(2m)!λ2(λ2−22)⋯(λ2−(2m−2)2)a0
同様に(4),(5)から奇数次の項の係数を求めると
a5a7=−5⋅4λ2−32a3=5!(λ2−12)(λ2−32)a1=−7⋅6λ2−52a5=−7!(λ2−12)(λ2−32)(λ2−52)a1⋮
ここでn=2m+1(m=1,2,3,⋯)とすると
an=a2m+1=(−1)m(2m+1)!(λ2−12)(λ2−32)⋯(λ2−(2m−1)2)a1
このように求めた係数を(2)に代入して解を求めると
y=a0+a1x−2!λ2a0x2−3!λ2−12a1x3+4!λ2(λ2−22)a0x4+5!(λ2−12)(λ2−32)a1x5+⋯+(−1)m(2m)!λ2(λ2−22)⋯(λ2−(2m−2)2)a0x2m+(−1)m(2m+1)!(λ2−12)(λ2−32)⋯(λ2−(2m−1)2)a1x2m+1+⋯(m=1,2,3,⋯)
このとき偶数次の項はa0で、奇数次の項はa1でまとめると
y=a0[1−2!λ2x2+4!λ2(λ2−22)x4+m=3∑∞(−1)m(2m)!λ2(λ2−22)⋯(λ2−(2m−2)2)x2m+⋯]+a1[x−3!λ2−12x3+5!(λ2−12)(λ2−32)x5+m=3∑∞(−1)m(2m+1)!(λ2−12)(λ2−32)⋯(λ2−(2m−1)2)x2m+1+⋯]
最初の括弧をy0、二番目の括弧をy1とすると、チェビシェフ方程式の一般解は次のようになる。
y=a0y0+a1y1
二つの級数y0とy1は比率判定法により∣x∣<1の範囲で収束することが分かる。(5)によりanan+2=(n+2)(n+1)n2−λ2=n2+3n+2n2−λ2であるため比率判定法を使うと
n→∞limn2+3n+2n2−λ2x2=x2<1
⟹−1<x<1
しかし、多くの問題ではx=cosθ、λは非負の整数の形で表され、すべてのθに対して収束する解を求めることが目標である。すなわち、x=±1でも収束する解を見つけることが目標である。幸いにもλが整数の場合、求める解が存在するが、このときλの値によって必ずy0,y1のどちらか一方の解のみが存在する。λが0または偶数の場合はy1が発散し、y0は偶数次の項だけを持つ有限項の多項式となる。λが奇数の場合はy0が発散し、y1は奇数次の項だけを持つ有限項の多項式となる。表で整理すると以下のようになる。
λの値 | y0 | y1 | 方程式の解 |
---|
0または偶数 | 有限項の多項式 | 発散 | y=a0y0 |
奇数 | 発散 | 有限項の多項式 | y=a1y1 |
ケース 1. λが0または偶数の場合
λ=0の場合、2次項からλ2を因数として持っており、すべて0になるためy0=1
λ=2の場合、4次項から(λ2−22)を因数として持っており、すべて0になるためy0=1−x2
λ=4の場合、6次項から(λ2−42)を因数として持っており、すべて0になるためy0=1−8x2+8x4
そしてλ=0の場合、x=1のy1=1+3!1+5!1⋅32+⋯は発散する。他の偶数の場合も同じである。したがって、λが0または偶数の場合は、解が偶数次の項のみを持つ有限項の多項式となる。つまり、級数y0の特定の項までのみ残る形の解を得る。λが奇数の場合は、反対の結果を得る。
ケース 2. λが奇数の場合
λ=1の場合、3次項から(λ2−12)を因数として持っており、すべて0になるためy1=x
λ=3の場合、5次項から(λ2−32)を因数として持っており、すべて0になるためy1=−3x+4x3
λ=5の場合、7次項から(λ2−52)を因数として持っており、すべて0になるためy1=5x−20x3+16x5
λ=1の場合、x2=1のy0は発散する。他の奇数の場合も同じである。したがって、λが奇数の場合は、解が奇数次の項のみを持つ有限項の多項式となる。つまり、級数y1の特定の項までのみ残る形の解を得る。
そしてλが負の場合は、λが正の場合と同じであることが、y0とy1を見ると分かる。例えば、λ=2の場合とλ=−2の場合が同じであり、λ=1の場合とλ=−1の場合が同じである。したがって、λは非負の整数の範囲で考えればよい。a0とa1の値をうまく選択して、x=1のときの解がy(x)=1になるようにすれば、これをチェビシェフ多項式Chebyshev polynomialと言い、通常Tn(x)と表記される。初めのいくつかのチェビシェフ多項式は以下のようである。
T0(x)T1(x)T2(x)T3(x)T4(x)T5(x)⋮=1=x=2x2−1=4x3−3x=8x4−8x2+1=16x5−20x3+5x
関連項目