地図で表される動力学系と不動点
定義1
- 定義域と値域が同じ関数$f : X \to X$をマップと言う。$f$を$k$回合成したマップを$f^{k}$と表す。
- $f(p) = p$を満たす$p \in X$を固定点と言う。
- 全ての$x \in N_{ \epsilon } ( p )$に対して$\displaystyle \lim_{k \to \infty} f^{k} (x) = p$を満たす$\epsilon > 0$が存在する場合、固定点$p$をシンクとする。
- $p$を除く全ての$x \in N_{\epsilon } (p)$に対して$f^{ \infty } (x) \notin N_{\epsilon } (p)$を満たす$\epsilon > 0$が存在する場合、固定点$p$をソースとする。
- $N_{ \epsilon } ( p ) = B ( p ; \epsilon )$は、$p$の半径$\epsilon$内にある全ての点を含むネイバーフッドを意味する。
例
- $X$で定義されたマップは、各点$x_{t-1}$を$x_{t}$へマッピングすることで動力学系を形成する。例えば、時間$t$が$1$だけ変わるたびに、$60$だけ$x$方向へ移動する点がある場合、この点の位置は次のように表される。 $$ x_{t} = f(x_{t-1}) = x_{t-1} + 60 $$
- 別のマップの例として$f(x) = x^3$を考えると、$$f(0) = 0 \\ f( \pm 1) = \pm 1$$であるので、$0$と$\pm 1$は固定点である。
- 特に$0$を含む十分に小さい区間$( - 1, 1)$の全ての数は、二乗するたびに小さくなり、最終的には$0$に収束するので、シンクである。
- $\pm 1$を含むどんな区間を考えても、その大きさが$1$より大きい数は、三乗するたびにその大きさが大きくなるので、ソースである。
シンクは近くの点が集まる一種の「収束点」、ソースは近かった点が徐々に離れていく一種の「発散点」と見ることができる。だから、シンクを安定した固定点、ソースを不安定な固定点とも呼ぶ。
これはグラフ理論のシンク、ソースと似ている。
参照
Yorke. (1996). CHAOS: An Introduction to Dynamical Systems: p5, 9. ↩︎