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分離ベクトルの発散 📂数理物理学

分離ベクトルの発散

$$ \begin{align*} \nabla \cdot \left( \dfrac{1}{r^2}\hat{ \mathbf{r} } \right) =&\ 4\pi \delta^3(\mathbf{r}) \\[1em] \nabla \cdot \left( \dfrac{1}{\cR^{2}} \crH \right) =&\ 4\pi \delta^3(\bcR) \\[1em] \nabla^2 \left(\dfrac{1}{\cR} \right) =&\ -4\pi \delta^3 ( \bcR ) \end{align*} $$

ここで、$\mathbf{r}$は位置ベクトル、$\bcR$は分離ベクトルだ。

説明

ベクトル関数 $\mathbf{v} = \dfrac{1}{r^2}\hat{\mathbf{r}}$があるとする。その大きさは距離の二乗に反比例し、方向は半径の方向だ。これからこの関数の発散を計算してみよう。球座標系での勾配の公式を使って、

$$ \nabla \cdot \mathbf{v} = \dfrac{1}{r^2}\dfrac{\partial}{\partial r}\left( r^2\dfrac{1}{r^2} \right) = \dfrac{1}{r^2}\dfrac{\partial}{\partial r}(1)=0 $$

しかし、発散定理を適用して計算すると、まったく異なる結果が出る。

発散定理

$$ \int_\mathcal{V} \nabla \cdot \mathbf{v} d\tau = \oint _{S} \mathbf{v} \cdot d \mathbf{a} $$

中心が原点で半径が$R$の球について積分するとしよう。

$$ \begin{align*} \int_\mathcal{V} \nabla \cdot \mathbf{v} d\tau &= \oint _{S} \mathbf{v} \cdot d \mathbf{a} \\ &= \int \left(\dfrac{1}{R^2}\hat{\mathbf{r}} \right) \cdot \left( R^2 \sin \theta d\theta d \phi \hat{\mathbf{r}} \right) \\ &= \int \sin \theta d\theta d\phi \\ &= \left( \int _{0} ^\pi \sin \theta d\theta \right) \left( \int _{0} ^2\pi d\phi \right) \\ &= 4\pi \end{align*} $$

上に計算した結果によると$\nabla \cdot \mathbf{v}=0$なので、これを積分しても$0$になるべきだ。しかし、発散定理に従って計算した結果は$4\pi$だ。どこかに問題があるのは明らかだ。問題があるのは$r=0$の部分だ。$r=0$で$\mathbf{v}=\dfrac{1}{r^2}\hat{\mathbf{r}}$の値が無限大になる。元々、$\dfrac{1}{r^2}$は$r=0$での値が存在しない。$\nabla \cdot \mathbf{v}=0$というのは$r\ne 0$の全ての場所での値が$0$であるという意味だ。しかし、原点を含んで積分した結果が$4\pi$なので、この積分値は$r=0$の場所からのみ出てくると言える。この問題を解決するために、ディラックのデルタ関数が導入された。 ${}\\ {}$

  • 3次元であり、
  • $0$ではない全ての場所での値が$0$であり、
  • 原点を含んだ全域における積分値が$4\pi$になるようにするために、

$$ \nabla \cdot \left( \dfrac{1}{r^2}\hat{ \mathbf{r} } \right) = 4\pi \delta^3(\mathbf{r}) $$

一般的に分離ベクトルについて表すと、

$$ \nabla \cdot \left( \dfrac{1}{\cR^2}\crH \right) = 4\pi \delta^3(\bcR) \tag{1} $$

分離ベクトルの勾配は$\nabla \left( \dfrac{1}{\cR} \right) = -\dfrac{1}{\cR^2}\crH$なので、これを$(1)$に代入すると、

$$ \begin{align*} && \nabla \cdot \left[ -\nabla \left(\dfrac{1}{\cR} \right) \right] &= 4\pi \delta^3 ( \bcR ) \\ \implies && \nabla \cdot \left[ \nabla \left(\dfrac{1}{\cR} \right) \right] &= -4\pi \delta^3 ( \bcR ) \\ \implies && \nabla^2 \left(\dfrac{1}{\cR} \right) &= -4\pi \delta^3 ( \bcR ) \end{align*} $$