一定な外部電場による極性分子の配向
概要 1
電気的に中性の原子が外部電場の中に置かれた場合、偏極して双極子モーメント$\mathbf{p}$を持つことになる。しかし、外部電場の影響を受けなくても双極子モーメントを持つ分子がある。このような分子を極性分子polar moleculeと呼ぶ。
極性分子
極性分子の例として水分子がある。水分子は$105^{\circ}$で曲がっているため、上の図のように上部と下部に極性の違いが生じる。特に水の双極子モーメントが大きいため、水は効果的な溶媒となる。
外部電場が一定の場合、極性分子内の正電荷と負電荷部分が受ける力の合計は$\mathbf{0}$である。だから、外部電場が極性分子に影響を与えないように見えるが、下の図のようにトルク(回転力)を受ける。
極性分子が受ける回転力は以下のように計算することができる。双極子モーメントの中心から$+q$までのベクトルを$\frac{1}{2}\mathbf{d}$としよう。点電荷$q$が電場$\mathbf{E}$によって受ける力は$\mathbf{F}=q\mathbf{E}$なので
$$ \begin{align*} \mathbf{N} =&\ \left[ \frac{1}{2}\mathbf{d} \times \mathbf{F}_+ \right] + \left[ -\frac{1}{2}\mathbf{d} \times \mathbf{F}_- \right] \\ =&\ \left[ \frac{1}{2}\mathbf{d} \times (q\mathbf{E} ) \right]+ \left[ -\frac{1}{2}\mathbf{d} \times (-q\mathbf{E}) \right] \\ =&\ q\mathbf{d} \times \mathbf{E} \end{align*} $$
よって、一様電場$\mathbf{E}$の中にある双極子$\mathbf{p} = q\mathbf{d}$は以下のようなトルクを受ける。
$$ \mathbf{N} = \mathbf{p} \times \mathbf{E} $$
トルク$\mathbf{N}$によって双極子モーメント$\mathbf{p}$が外部電場$\mathbf{E}$と平行になるようになる。つまり、中性原子の場合は外部電場によって双極子モーメントが生じるが、既に双極子モーメントを持っていた極性分子の場合は、双極子モーメントが外部電場と平行になるように回転する。
David J. Griffiths, 基礎電磁気学(Introduction to Electrodynamics, 金晋承 訳) (第4版, 2014), p183-185 ↩︎