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ダイナミクスにおけるヒステリシス現象 📂動力学

ダイナミクスにおけるヒステリシス現象

定義

パラメータの変化に伴って起こる力学系の変化が非可逆的irreversibleである現象をヒステリシス現象hysteresisという1

説明

例として、上記のようなフォールドバイファーケーションを考えてみよう。想像しやすくするために、$x$ をミツバチの個体数、$r$ を平均気温としよう。バイファーケーションダイアグラムを見ると、システムが最大で3つの不動点を持ち、そのうち2つの安定した不動点が存在し、ミツバチの個体数がそのうちの一つに収束することがわかる。

危機

個体数が比較的多い$x_{2}$ の状態で地球温暖化により気温$r = r(t)$ が少しずつ上昇するとしよう。すると、最初は非常に遅い速度で安定した不動点$x_{2} = x_{2} (r)$ の値自体が小さくなり、ターニングポイント$r_{2}$ を超えると$x_{2}$ が消えて$x_{1}$ に収束し、急激な個体数の崩壊につながる。このように、特定の数値が急激に変化したり、劇的に変わることを危機crisisまたはカタストロフィcatastropheともいう。

回復

一方で、既に危機を経験した後に$r$ が減少してターニングポイント$r_{2}$ を過ぎても、元の状態にすぐに戻ることはできない。すでに個体数が比較的少ない$x_{1}$ の近くにいるため―つまり、すでに個体数$x(t)$ が$\left\{ x_{1} \right\}$ のベイズンに属しているため、ターニングポイント$r_{1}$ を通る極端な変化がない限り、低い個体数$x_{1}$ にとどまるしかないのである。この点で、このシステムでは$r$ が動く方向によって単純に自由に変わるのではなく、ターニングポイントの前後の非可逆性を発見でき、これをヒステリシス現象と呼ぶのである。


  1. Strogatz. (2015). Nonlinear Dynamics And Chaos: With Applications To Physics, Biology, Chemistry, And Engineering(2nd Edition): p60. ↩︎