ダイナミクスにおけるヒステリシス現象
定義
パラメータの変化に伴って起こる力学系の変化が非可逆的irreversibleである現象をヒステリシス現象hysteresisという1。
説明
例として、上記のようなフォールドバイファーケーションを考えてみよう。想像しやすくするために、 をミツバチの個体数、 を平均気温としよう。バイファーケーションダイアグラムを見ると、システムが最大で3つの不動点を持ち、そのうち2つの安定した不動点が存在し、ミツバチの個体数がそのうちの一つに収束することがわかる。
危機
個体数が比較的多い の状態で地球温暖化により気温 が少しずつ上昇するとしよう。すると、最初は非常に遅い速度で安定した不動点 の値自体が小さくなり、ターニングポイント を超えると が消えて に収束し、急激な個体数の崩壊につながる。このように、特定の数値が急激に変化したり、劇的に変わることを危機crisisまたはカタストロフィcatastropheともいう。
回復
一方で、既に危機を経験した後に が減少してターニングポイント を過ぎても、元の状態にすぐに戻ることはできない。すでに個体数が比較的少ない の近くにいるため―つまり、すでに個体数 が のベイズンに属しているため、ターニングポイント を通る極端な変化がない限り、低い個体数 にとどまるしかないのである。この点で、このシステムでは が動く方向によって単純に自由に変わるのではなく、ターニングポイントの前後の非可逆性を発見でき、これをヒステリシス現象と呼ぶのである。
Strogatz. (2015). Nonlinear Dynamics And Chaos: With Applications To Physics, Biology, Chemistry, And Engineering(2nd Edition): p60. ↩︎