一階導関数のラプラス変換
定理1
次の二つの条件を仮定しよう。
- 任意の区間 $0 \le t \le A$で関数 $f(t)$が連続であり、1次導関数 $f^{\prime}(t)$が部分的に連続であるとする。
- $t \ge M$のとき $|f(t)| \le Ke^{at}$を満たす実数 $a$と正の数 $K$、$M$が存在する。
それならば、$f$の1次導関数のラプラス変換 $\mathcal{L} \left\{ f^{\prime}(t) \right\}$が $s>a$のときに存在し、その値は以下の通りである。
$$ \mathcal {L} \left\{ f^{\prime}(t) \right\} = s\mathcal {L} \left\{ f(t) \right\} -f(0) $$
説明
条件を簡単に言い換えると、「$f(t)$のラプラス変換が存在し、$f^{\prime}(t)$が部分的に連続である」となる。
証明
$\displaystyle \lim_{A \to \infty} \int _{0} ^A e^{-st}f^{\prime}(t)dt$が収束すれば、証明完了である。$f^{\prime}$が区間で部分的に連続であるとしたので、$k$個の不連続点があるとしよう。そして、各不連続点を$t_{1}$、$t_2$、$\cdots$、$t_{k}$としよう。積分を不連続点を基準に分けると以下のようになる。
$$ \int _{0} ^A e^{-st}f^{\prime}(t)dt = \int _{0} ^{t_{1}} e^{-st}f^{\prime}(t)dt + \int _{t_{1}} ^{t_2} e^{-st}f^{\prime}(t)dt + \cdots + \int _{t_{k}} ^A e^{-st}f^{\prime}(t)dt $$
今、各項を部分積分しよう。定積分項と積分項を別々に整理すると次のようになる。
$$ \begin{align*} \int_{0}^A e^{-st}f^{\prime}(t)dt &= \left[ e^{-st}f(t)\right]_{0}^{t_{1}} + \left[ e^{-st}f(t)\right]_{t_{1}}^{t_2} + \cdots + \left[ e^{-st}f(t)\right]_{t_{k}}^{A} \\ &\quad +s \left[ \int _{0} ^{t_{1}} e^{-st}f(t)dt + \int _{t_{1}} ^{t_2} e^{-st}f(t)dt + \cdots + \int _{t_{k}} ^A e^{-st}f(t)dt \right] \end{align*} $$
定積分項を計算し、積分項を合わせると次のようになる。
$$ \begin{align*} &\left[ e^{-st_{1}}f(t_{1}) - e^{-s0}f(0) \right] + \left[ e^{-st_2}f(t_2) - e^{-st_{1}}f(t_{1}) \right] + \cdots + \left[ e^{-sA}f(A) - e^{-st_{k}}f(t_{k}) \right] + s \int _{0} ^{A} e^{-st}f(t)dt \\ &= e^{-sA}f(A) - e^{-s0}f(0) + s \int _{0} ^{A} e^{-st}f(t)dt \end{align*} $$
仮定により、$f(t)$のラプラス変換が存在するので、
$$ \int _{0} ^A e^{-st}f^{\prime}(t)dt = e^{-sA}f(A) - f(0) + s \mathcal{L} \left\{ f(t) \right\} $$
今、$\displaystyle \lim_{A \to \infty} e^{-sA}f(A)$が収束するか確かめれば、$f^{\prime}(t)$のラプラス変換が存在することが示される。**仮定2.**により、$|f(A)| \le Ke^{aA}$である。 両辺に$e^{-sA}$を掛ければ、
$$ |e^{-sA}f(A)| \le Ke^{-(s-a)A} $$
再び両辺に極限$\lim \limits_{A \to \infty}$をとると$s>a$の時、右辺は$0$に収束する。従って、左辺も$0$に収束する。すなわち、
$$ \begin{align*} \int_{0}^\infty e^{-st}f^{\prime}(t)dt &= \lim_{A \to \infty} \int _{0} ^A e^{-st}f^{\prime}(t)dt \\ &= \lim_{A \to \infty} e^{-sA}f(A) - f(0) + s \mathcal{L} \left\{ f(t) \right\} \\ &= s \mathcal{L} \left\{ f(t) \right\} -f(0) \\ &= s F(s) -f(0) \end{align*} $$
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参照
William E. Boyce, Boyce’s Elementary Differential Equations and Boundary Value Problems (11th Edition, 2017), p248-249 ↩︎