多項式関数の既約元
定義1
定数関数でない$f(x) \in F [ x ]$が、$f(x)$より次数の低いある$g(x) , h(x) \in F [ x ]$の積$f(x) = g(x) h(x)$として表せないとき、$f(x)$を$F$上の既約元irreducible elementという。
説明
例として$\mathbb{Q} [x ]$を考えてみると、$x^2 - 2$は$\mathbb{Q}$上で既約元だが、$\mathbb{R} [ x ]$における$x^2 - 2$は$\mathbb{R}$上で $$ (x + \sqrt{2} ) ( x - \sqrt{2} ) $$ と因数分解できる。また、$x^2 + 1$は$\mathbb{R}$上では既約元だが、$\mathbb{C}$では $$ (x + i ) ( x - i ) $$ と因数分解できる。
ちょうど位相数学で開・閉を語るとき全体集合をどこに取るかが重要であるように、どこで既約なのかに気を配らなければならない。もちろん定義上、$F [ x ]$の多項式関数は$F$上でだけ見ればよいが、$F$を拡張した$E$に対しては$f(x) \in E[x]$となるだろう。
このような既約性irreducibilityを考えることで、我々は因数定理の真の完成を考えられるようになる。
定理
- [1]: 既約元$p(x) \in F [ x ]$が$r_{1} (x) \cdots r_{n} (x) \in F [ x ]$を割り切るなら、$p(x)$は$r_{1} (x) , \cdots , r_{n} (x) $のいずれかを割り切らなければならない。
- [2]: $F$が体なら、定数関数でないすべての$f(x) \in F [ x ]$は既約元の積に因数分解され、その方法は唯一である。
- ここで唯一というのは、その順序や単元unitの積を考慮しないという意味である。たとえば $$ x^2-1 = (x+1)(x-1) = [-(x+1)][-(x-1)] = (x-1)(x+1) $$ のような違いは気にしないということである。
意義
この定理は、数論に登場する算術の基本定理を抽象代数へ拡張したものと見ることができる。因数定理が多項式関数の因数分解の存在性を証明したなら、上の事実はその唯一性を保証してくれる。
Fraleigh. (2003). A first course in abstract algebra(7th Edition): p214. ↩︎
