関数解析学における作用素
📂バナッハ空間関数解析学における作用素
定義
(X,∥⋅∥X),(Y,∥⋅∥Y)をノルム空間と呼ぶ。
ノルム空間からノルム空間への写像を作用素と呼ぶ。
x,x1,x2∈Xに対して、T:X→Yが
T(x1+x2)=T(x1)+T(x2)andT(ax)=aT(x)
を満たす場合、線形作用素と呼ぶ。
すべてのx∈Xに対して、∥T(x)∥Y≤C∥x∥Xを満たすC≥0が存在する場合、Tは有界であるという。
3.を満たすCの中で最も小さいCをTの作用素ノルムと定義し、以下のように記す。
∥T∥:=min{C:∥T(x)∥Y≤C∥x∥X}
有界線形作用素T:X→Yをすべて集めた集合をB(X,Y)のように表す。
説明
ベクトル空間からベクトル空間への写像を特に変換と呼ぶように、ノルム空間からノルム空間への関数を特に作用素と呼ぶ。
便宜上、多くの教科書では、ベクトル空間間の任意の関数X→Yを変換と呼び、X→Xのような変換を作用素と呼ぶ。
4.の定義から次のことが得られる。
∥T∥=x∈X∥x∥=1sup∥T(x)∥Y
これはTのノルムとも定義される。∥x∥X=1という条件がなぜ存在するのか理解できなければ、3.を考えればいい。
作用素は代数的には演算を保持するホモモルフィズムであり、当然、これに関する定理もすべて使うことができる。
「演算」という表現の代わりに「作用素」という表現を使うのは、過去のように「演算」に焦点を当てるのではなく、ある空間での「作用」に興味を持ち、数学的に抽象化して扱うためである。回転変換のようなものを考えると、空間上である点を回転させて移動させると見ることができる。座標をベクトルとしてとり、行列を乗算して「計算」した結果を得るという説明も正しいが、点の位置を「移動させる」という行動として考えれば、作用素という表現も十分適切である。
このように、与えられた空間内でベクトルとして表される数学的な対象に対して、ある「作用Tを加える」という表現を使うことができるようになった。その中でも特に私たちが関心を持つのは線形作用素であり、例として次のようなものがある。
恒等作用素 I:X→X,Ix=x
その名の通り、作用を加えても変わらない、あるいは作用を加えないのと同じである作用である。1やidとも記される。
零作用素 0(x):=0
どんな元も0にする作用で、作用素のベクトルスペースでゼロベクトルの役割を果たす。
微分作用素 D:C1→C1,Df=dxdf=f′
微分を行う作用素であり、実際には高校から誰もが知らず知らずのうちに使ってきた事実である。
積分作用素 T:C[0,1]→C[0,1], y(t)=Tx(t)=∫01K(t,s)x(s)ds
積分もまた一つの作用素であり、このときKをカーネルという。積分変換とも言う。
行列 TA(x):=Ax
m×n行列Aは、CnからCmへの関数と考えることができる。