行列の指数関数と対数関数
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定義
指数関数 exp と 対数関数 log を 行列 に対して一般化しようとしている。
行列の指数
指数関数を行列に対して一般化した exp:Cn×n→Cn×n は行列 A∈Cn×n に対して次のように定義される。
expA:=k=0∑∞k!Ak
expA は簡単に eA とも表され、A の 行列指数matrix exponential という。
行列の対数
対数関数を行列に対して一般化した log:Cn×n→Cn×n は expA=B を満たす行列 A と B が存在する時に A を logB と表し、 A を B の 行列対数matrix logarithm という。
定理
もし二つの行列 A,B∈Cn×n が AB=BA を満たせば、次が成立する。
logAB=logA+logB−2πiU(logA+logB)
特に A の 固有値 μk と B の固有値 νk に対して次の系を得られる。
logAB=logA+logB⟺∀k=1,⋯,n:argμk+argνk∈(−π,π]
ここで arg は 複素数の偏角、 U は次のように定義された 行列アンワインディング関数matrix unwinding function である。
U(A):=2πiA−logeA,A∈Cn×n
解説
行列の指数と対数は 複素数 で定義される指数と対数を形式的に拡張したものである。見ての通り、行列の指数は行列の冪級数を用いて定義される。
エルミートおよび正定値行列の空間において
エルミートおよび正定値行列の空間:
- エルミート行列の空間: サイズが n×n の エルミート行列 の 集合 は次のように表される。スカラー体 R に対して Hn は ベクトル空間 である。
Hn:={A∈Cn×n:A=A∗}
- 正定値行列の集合: サイズが n×n の 正定値行列 の集合を Pn と表す。 Pn⊂Hn は Hn の 凸錐 である。
すべての行列の空間ではなく、エルミート行列の空間 Hn が定義域で正定値行列の凸錐 Pn が値域である exp:Hn→Pn は 全単射 であり、その逆関数は log:Pn→Hn である。特にこれらは 微分同型写像 である。

関連項目