熱絶縁係数の熱力学的導出
式
$m$を気体分子の質量、$h$を高さ、$T$を温度とすると、次の式が成り立つ。
$$ \dfrac{dT}{dh} = - {{ \gamma -1} \over { \gamma }} \dfrac{ mg }{k_{B}} $$
このとき、$\gamma = \dfrac{C_{p}}{C_{V}}$は等圧比熱と等容比熱の比率である。
説明
ご存知の通り、高度が上がるにつれて気温は下がるが、その比率を数式で表したものである。もちろん、これは湿度などさまざまな変数を全く考慮せずに熱力学だけを用いて導き出された結果である。このとき、気体分子は高度の差しかなく、外部と熱を交換しない断熱過程を仮定する。大気中では、風と風が出会ったときに混ざるよりは、暖かい風が上に、冷たい風が下に行くことを想像すると良い。
導出
Part 1. $\dfrac{T}{p} dp = - \dfrac{mg}{k_{B} T} dh$
厚さが$dh$で、密度が$\rho$の大気が加わる圧力が$p$であるとすると、次が成り立つ。
$$ dp = - \rho g dh $$
$$ pV = N k_{B} T $$
質量が$m$で、分子が$N$個のときの密度は$\rho = Nm$であり、理想気体の方程式から$N = \dfrac{p}{k_{B} T}$なので、次が成り立つ。
$$ dp = - {{p} \over {k_{B} T}} m g dh $$
もう少し整理すると、次を得る。
$$ \dfrac{T}{p} dp = - {{mg} \over {k_{B}}} dh $$
Part 2. $\dfrac{T}{p} dp = \dfrac{ \gamma }{ \gamma -1} dT$
$p V^{\gamma}$は定数である。
$p V^{\gamma}$は定数で、理想気体の方程式から$V^{\gamma} \propto ( p^{-1} T )^{\gamma}$なので、次の式は定数である。
$$ p V^{\gamma} = p ( p^{-1} T )^{\gamma} = p^{1- \gamma} T^{\gamma} = C $$
上記の式の両辺にログを取ると、次のようになる。
$$ (1- \gamma) \ln p + \gamma \ln T = \ln C $$
全微分を取ると、次のようになる。
$$ (1 - \gamma ) {{1} \over {p}} dp + \gamma {{1} \over {T}} dT = 0 $$
整理すると、次を得る。
$$ \dfrac{T}{p} dp = \dfrac{ \gamma }{ \gamma -1} dT $$
Part 3.
上記の**Part 1.とPart 2.**の結果を組み合わせると、次のようになる。
$$ -\dfrac{mg}{k_{B} T} dh = \dfrac{ \gamma }{ \gamma -1} dT $$
整理すると、次を得る。
$$ \dfrac{dT}{dh} = - \dfrac{ \gamma -1}{ \gamma } \dfrac{ mg }{k_{B}} $$
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