リドールド盆地
定義 1
力学系で $n$ 個のアトラクターに対するベイスン $R_{1} , \cdots , R_{n}$ が与えられているとする。集合 $\mathcal{R}$ がすべての $\mathbf{x} \in \mathcal{R}$ とすべての $\varepsilon > 0$ に対してオープンボール $B \left( \mathbf{x} ; \varepsilon \right)$ がすべての $R_{1} , \cdots , R_{n}$ と互いに素でない場合、 $R$ をリドルドベイスンriddled basinとする: $$ \forall \mathbf{x} \in \mathcal{R} , \varepsilon > 0 , k = 1 , \cdots n : B \left( \mathbf{x} ; \varepsilon \right) \cap R_{k} \ne \emptyset \implies \mathcal{R} \text{ is a riddled basin} $$
例 2
リドルドベイスンとは簡単に言って、複数のアトラクターに対するベイスンが複雑な構造を持って混ざり合ったベイスンで、どれだけ小さいネイバーフッドを取っても、その中にすべてのベイスンを含む。定義上、リドルドベイスンのどれだけ小さい部分集合を取ってもこの性質は繰り返し現れ、フラクタルとの関連性を見つけることができる。
$$ f : z \mapsto z^{2} - \left( 1 + i a \right) \bar{z} $$ 例として上記のように複素平面でマップで定義された力学系を考えてみる。ここで直線 $N_{1} = \left\{ z = x + iy : y = a/2 \right\}$ は $a$ が何であろうと $$ \begin{align*} & f \left( x + i a / 2 \right) \\ =& \left( x + i a / 2 \right)^{2} - \left( 1 + i a \right) \left( x - i {\frac{ a }{ 2 }} \right) \\ =& x^{2} - {\frac{ 3 a^{2} }{ 4 }} - x + i {\frac{ a }{ 2 }} \end{align*} $$ であるため $f \left( N_{1} \right) \subset N_{1}$、すなわち $f$ の下で不変であることがわかる。この直線を原点に対して ${\frac{ 4 \pi }{ 3 }}$ だけ回転変換を取った直線を $N_{2}$、もう一度回転させた直線を $N_{3}$ とするとき、これらは実際に $f$ の三つのアトラクターになるという。
三つのアトラクターに対するベイスンをそれぞれ赤、緑、青で視覚化すると上記のように示され、リドルドベイスンはどんな場所にどれだけ小さな円を取っても三つのベイスンと重なる部分がある。一つの色の立場から見れば、どこを掘っても穴がぽつぽつ空いているriddledと見なすことができ、その命名が適切であると言える。
Yorke. (1996). CHAOS: An Introduction to Dynamical Systems: p170. ↩︎
https://brain.cc.kogakuin.ac.jp/~kanamaru/Chaos/e/RiddledBasin/ ↩︎