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ペアノの空間充填定理の証明 📂位相幾何学

ペアノの空間充填定理の証明

定理 1

$I = [0,1]$に対して、全射連続関数$f : I \to I \times I$が存在する。

説明

これは短いながらも非常に衝撃的な定理だ。この定理が真であれば、線のみで平面を構成できるという意味であるが、証明を見ても納得がいくのは難しい。‘空間充填曲線定理’は、日本で翻訳されたものを勝手に使用している。

証明

パート1.

以下の図のようにパスの数列$\left\{ f_{n} \right\}$を定義する。

5B2E02BE0.png

$$ f_{1} : I \to I \times I $$

2.png

$$ f_{2} : I \to I \times I $$

3.png

$$ f_{3} : I \to I \times I $$

それから、全ての$x \in I$に対して$f_{n}$は $$ d ( f_{n}(x) , f_{n+1} (x) ) < {{1} \over {2^{n} }} $$ なのでコーシー列だ。

コンパクト距離空間の等価条件:距離空間がコンパクトであることと、完備であり、かつ完全有界であることは等価である。

一方、$I \times I$はコンパクト距離空間なので完備空間であり、$f_{n} (x)$は$I \times I$のある点に収束する。

ここで$\displaystyle f(x) : = \lim_{n \to \infty} f_{n} (x)$と定義してみよう。$f$が全射連続関数であることを示せば、証明は完了である。


パート2. $f$は関数である。

全ての$x \in I$に対して$f(x)$が唯一存在することを示せばよい。


パート3. $f$は連続である。

$f_{n}$が$f$に一様収束することを示せば、$f_{n}$が連続であるため、$f$も連続である。与えられた$\varepsilon > 0$に対して、$\displaystyle {{2} \over {2^{n_{0}} }} < \varepsilon$を満たすように$n_{0} \in \mathbb{N}$を選ぶ。全ての$x \in I$に対して $$ d ( f_{n}(x) , f (x) ) < {{1} \over {2^{n} }} $$ である。三角不等式により、 $$ d ( f_{n}(x) , f (x) ) < d ( f_{n}(x) , f_{n_{0}} (x) ) + d ( f_{n_{0}}(x) , f (x) ) < {{1} \over {2^{n_{0}} }} + {{1} \over {2^{n_{0}} }} = {{2} \over {2^{n_{0}} }} < \varepsilon $$ つまり、$f_{n}$は$f$に一様収束し、$f$は連続である。


パート4. $f$は全射である。

全ての$y \in I \times I$に対して、$y \in f(I)$が成り立つことを示せば、$f$は全射である。$\left\{ f_{n} \right\}$の定義に従って、与えられた$y \in I \times I$に対して、 $$ d(y, f_{m} (x) ) < {{ 1 } \over { 2^{m} }} $$ を満たす$x \in I$と$m \in \mathbb{N}$が存在する。それから、$n \ge m$に対して $$ d(y, f_{n} (x) ) \le d(y, f_{m} (x) ) + d(f_{m} (x) , f_{n} (x) ) < {{2} \over {2^{m}}} $$ 今、与えられた$\epsilon > 0$に対して、$\displaystyle {{3} \over {2^{n_{0}}}} < \epsilon$を満たす$n_{0} > m$を選ぶ。三角不等式によって、 $$ d ( y , f (x) ) < d ( y , f_{n_{0}} (x) ) + d ( f_{n_{0}}(x) , f (x) ) < {{2} \over {2^{n_{0}} }} + {{1} \over {2^{n_{0}} }} = { {3} \over { 2^{n_{0} } } } < \varepsilon $$ つまり、$B_{d} (y , \varepsilon ) \cap f(I) \ne \emptyset$であり、全ての$\varepsilon > 0$に対して$\displaystyle d ( y , f (x) ) < \varepsilon$なので、$y \in \overline{ f(I) }$である。

コンパクトと連続関数:$f : X \to Y$について、$X$がコンパクトであり、$f$が連続であるとしよう。$Y$がハウスドルフであれば、$f$は閉関数である。閉集合$C \subset X$に対して、$f(C) \subset Y$は閉集合である。

先に$f$が連続であることをパート2で示したので、$f(I)$は$I \times I$で閉集合であり、従って$y \in \overline{ f(I) } = f(I)$である。したがって、$f : I \to I \times I$は全射連続関数である。


  1. Munkres. (2000). Topology(2nd Edition): p272. ↩︎