関数の原像
定義 1
関数 $f: X \to Y$ と $B \subset Y$ について、$f^{-1}(B): = \left\{ x \in X \ | \ f(x) \in B \right\}$ を $f$ による $B$ の原像または逆像という。
解説
表記は似ているが、定義だけで逆像と逆関数が関係しているとは言えず、これらを混同してはならない。
韓国語で話すときは逆像が自然だが、英語では[プレイメージ]が自然と感じる人がいるだろう。これは、逆を意味する漢字が単に「どこから来たか」という逆像の概念によく合うのに対して、上で述べたように[インバース]という言葉は逆関数を連想させるため、意識的に使うのを避けるからだ。もちろん、単に[プレイメージ]が発音しやすいのでよく使われる、前置詞としての「元」が馴染みがないので使わない、などの単純な理由もある。
基本性質
- [1] 空集合: $$ f ( \emptyset ) = \emptyset $$
- [2] 単元素集合: $$ x \in X \implies f \left( \left\{ x \right\} \right) = \left\{ f(x) \right\} $$
- [3] 単調性: $$ A \subset B \subset X \implies f (A) \subset f(B) \\ C \subset D \subset Y \implies f^{-1} (C) \subset f^{-1} (D) \\ f(X) \subset Y \iff X \subset f^{-1} (Y) $$
- [4] 和集合: $$ f \left( \bigcup_{\gamma \in \Gamma} A_{\gamma} \right)= \bigcup_{\gamma \in \Gamma } f \left( A_{\gamma} \right) \\ f^{-1} \left( \bigcap_{\gamma \in \Gamma} A_{\gamma} \right) = \bigcap_{\gamma \in \Gamma } f^{-1} \left( A_{\gamma} \right) $$
- [5] 交差点: $$ f^{-1} \left( \bigcup_{\gamma \in \Gamma} A_{\gamma} \right)= \bigcup_{\gamma \in \Gamma } f^{-1} \left( A_{\gamma} \right) \\ f \left( \bigcap_{\gamma \in \Gamma} A_{\gamma} \right) {\color{red}\subset} \bigcap_{\gamma \in \Gamma } f \left( A_{\gamma} \right) $$
- [6] 差集合: $$ f (A) \setminus f (B) \subset f (A \setminus B) \\ f^{-1} (C) \setminus f^{-1}(D) = f^{-1} (C \setminus D) $$
特に [5]、[6]では、関数は交差点をそのまま保持できないことに注意。等号を満たすためには、$f$ が単射でなくてはならない。
全単射と逆関数の概念は繰り返しを通じて慣れることができるが、逆像に関しては、できるだけ早く、正確に学ぶ必要がある。逆像を大まかに理解しておいても、すぐに線形代数学におけるゼロ空間に対する直感が落ち、そのまま抽象代数学まで影響を及ぼす。関数の像とは異なる性質が多いので、ただ反対だと思って見過ごすのではなく、ちゃんと勉強して、しっかり理解するようにしよう。
李興天 訳、You-Feng Lin. (2011). 集合論(Set Theory: An Intuitive Approach): p173. ↩︎