位相数学における分離性質
定義 1
$X$ を位相空間とする。$a,b \in X$ について、$a \ne b$ 且つ $U, V \subset X$ が $X$ で開集合であるとしよう。
- $T_{0}$:$a$ と $b$ のどちらか一方だけを含む $U$ が存在する場合、$X$ をコルモゴロフkolmogorov 空間という。
- $T_{1}$:任意の $a,b$ に対して $$ a \in U, b \notin U \\ a \notin V, b \in V $$ を満たす $U,V$ が存在する場合、$X$ をフレシェfrechet 空間という。
- $T_{2}$:任意の $a,b$ に対して $$ a \in U, b \in V \\ U \cap V = \emptyset $$ を満たす $U,V$ が存在する場合、$X$ をハウスドルフhausdorff 空間という。
- $T_{3}$:$X$ が $T_{1}$-空間であり、$a$ を含まないすべての閉集合 $C \subset X$ に対して $$ a \in U , C \subset V \\ U \cap V = \emptyset $$ を満たす $U,V$ が存在する場合 $X$ を正則regular 空間という。
- $T_{4}$:$X$ が $T_{1}$-空間であり、$A \cap B = \emptyset$ とする二つの閉集合 $A, B \subset X$ に対して $$ A \subset U , B \subset V \\ U \cap V = \emptyset $$ を満たす $U,V$ が存在する場合 $X$ を正規normal 空間という。
説明
これらの性質は分離公理separation Axiom とも呼ばれ、文字通り空間を部分に分けることに焦点を当てている。$T_{i}$ と表される分類はコルモゴロフ分類kolmogorov classificationと呼ばれる。定義を見るだけで $$ T_{4} \implies T_{3} \implies T_{2} \implies T_{1} \implies T_{0} $$ という感じがするだろうし、実際にそうで、見た目が良い分類法である。
特に、$T_{2}$、ハウスドルフ空間は、その条件が多すぎず少なすぎずで、ちょうど使いやすいレベルであることがよく関心の対象になる。反例としてよく使われる様々な奇妙な空間は大抵$T_{2}$ を満たさない場合が多い。ハウスドルフ空間でない例としては、シェルピンスキー空間と離散でない空間がある。
以下は、ハウスドルフ空間が持ついくつかの便利な性質である。すべての距離空間がハウスドルフ空間であるため、利用する余地は多いに違いない。
定理
- [2-1]: $T_{2}$ は位相的性質である。
- [2-2]: $T_{2}$ は遺伝性の性質である。
- [2-3]: [$T_{2}$-空間の数列 $\left\{ x_{n} \right\}$ は収束する場合、ただ一つの点に収束する。](../456)
証明
[2-1]
位相同型写像 $f : X \to Y$ が存在し、$X$ がハウスドルフ空間だとしよう。$Y$ がハウスドルフ空間であることを示せば証明は完了する。
$f$ は全単射であるから、異なる二つの $y_{1}, y_{2} \in Y$ に対して、$$ a = f(x_{1}) \\ b = f(x_{2}) $$ を満たしつつ異なる二つの $x_{1}, x_{2} \in X$ が存在する。前提から$X$ はハウスドルフ空間なので、 $$ x_{1} \in U \\ x_{2} \in V \\ U \cap V = \emptyset $$ を満たす開集合 $U, V \subset X$ が存在する。$f$ は連続性によって開いた関数なので、$f(U)$ と $f(V)$ は $Y$ で開集合であり、 $$ a \in f(U) \\ b \in f(V) \\ f(U) \cap f(V) = \emptyset $$ したがって、$Y$ はハウスドルフ空間である。
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Munkres. (2000). Topology(2nd Edition): p195. ↩︎