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原始ピタゴラス数は互いに素である。 📂整数論

原始ピタゴラス数は互いに素である。

定理

$a^2 + b^2 = c^2$を満たす三つの自然数について、$a,b,c$のとき $$ \gcd (a,b) = 1 \\ \gcd (b,c) = 1 \\ \gcd (c,a) = 1 $$

解説

一見、ピタゴラス数でも何でも明らかに見えるが、最大公約数を考えるとそうでもない。例えば、ピタゴラス数という条件がなければ$\gcd (6,10,15) = 1$だが、各2数はそれぞれの公約数を持つ。 戦略:証明は基本的に以下の2つの補題を前提としている。

ピタゴラス数の別表現: $a^2 + b^2 = c^2$を満たす三つの自然数について$a,b,c$のとき、 $$ \begin{align*} a =& st \\ b =& {{s^2 - t^2 } \over {2}} \\ c =& {{s^2 + t^2 } \over {2}} \end{align*} $$ 互いに素な二つの奇数$s>t$が存在する。

この定理の証明過程で、$(a,b,c)$が原始ピタゴラス数トリプルのとき、$\gcd (s,t) = 1$であることが導出できる。

ある数を割る素数はその約数の少なくとも一つを割る: $n : = d_{1} d_{2} \cdots d_{r}$について$p \mid n$のとき、$p$は$d_{1} , d_{2} , \cdots , d_{r}$の一つを割らなければならない。

証明

パート1. $\gcd (a,b) = 1$

素数$g$が $$ a = st \\ \displaystyle b = {{s^2 - t^2 } \over {2}} $$ の公約数だと仮定する。

すると$g \mid st$であるから、$g \mid s$か$g \mid t$でなければならず、$\displaystyle g \mid {{s^2 - t^2 } \over {2}}$であるから$g \mid (s-t)$か$\displaystyle g \mid {{s + t } \over {2}}$でなければならない。ここで$g \mid s$とすると、原始ピタゴラス数という仮定から$\gcd (s,t)=1$であるため、$g \nmid t$となる。従って、 $$ g \nmid (s-t) \\ g \nmid {{s + t } \over {2}} $$ これは矛盾である。


パート2. $\gcd (b,c) = 1$

素数$h$が $$ b = {{s^2 - t^2 } \over {2}} \\ c = {{s^2 + t^2 } \over {2}} $$ の公約数だとする。

すると $$ h \mid {{s^2 - t^2 } \over {2}} \\ h \mid {{s^2 + t^2 } \over {2}} $$ から $$ h \mid \left( {{s^2 - t^2 } \over {2}} - {{s^2 + t^2 } \over {2}} \right) \\ h \mid \left( {{s^2 - t^2 } \over {2}} + {{s^2 + t^2 } \over {2}} \right) $$ となり、結論として $$ h \mid s^2 \\ h \mid t^2 $$ であり、したがって$\gcd (s,t) \ne 1$であるため、矛盾する。


パート3. $\gcd (c,a) = 1$

素数$k$が $$ a = st \\ c = {{s^2 + t^2 } \over {2}} $$ の公約数とする。

すると、$k \mid st$であるから、$k \mid s$か$k \mid t$でなければならず、$\displaystyle k \mid {{s^2 + t^2 } \over {2}}$である。ここで$k \mid s$とすると、原始ピタゴラス数という仮定から$\gcd (s,t)=1$であるため$k \nmid t$となる。従って、$\displaystyle k \nmid {{s^2 + t^2 } \over {2}}$で、これは矛盾である。