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位相数学における基底と局所基底 📂位相幾何学

位相数学における基底と局所基底

定義

位相空間 $\left( X , \mathscr{T} \right)$ において $\mathscr{B} , \mathscr{B}_{x} \subset \mathscr{T}$ とする。

  1. $B_{\lambda} \in \mathscr{B}$ とするとき、全ての $U \in \mathscr{T}$ に対して $$ U = \bigcup_{\lambda \in \Lambda} B_{ \lambda } $$ を満たす近傍 $\Lambda$ が存在すれば、$\mathscr{B}$ を $\mathscr{T}$ に対する基底basisという。このとき位相 $\mathscr{T}$ は $\mathscr{B}$ によって生成されるgeneratedという。
  2. $x \in X$ とするとき、全ての $B \in \mathscr{B}_{x}$ に対して $x \in B$ であり、$x$ を含む全ての $U \in \mathscr{T}$ に対して $$ x \in B \subset U $$ を満たす $B \in \mathscr{B}_{x}$ が存在すれば、$\mathscr{B}_{x}$ を $x$ での局所基底local Basisという。

説明

定義がかなり分かりづらく書かれているため、練習問題を解く前に概念的に受け入れる方がずっと楽だろう。線形代数学での基底と感じが似ているが、定義上で似ていることはほとんどないので、その関連性を探りすぎないようにしよう。

一言で言えば、基底は与えられた位相を合集として作ることができる集合だ。交差点を考える必要はないので、位相で「小さい」開集合を集めて構成すればいい。

例えば、距離空間を例に挙げると、全ての開球の集合は距離空間の基底になる。

必要性

本を読んで学ぶ立場からすると、線形代数でそうだったように、位相 $\mathscr{T}$ で基底 $\mathscr{B}$ を探すと考えると難しくて理解しづらい概念だ。反対に、生成、つまり基底から位相を作る立場になれば、基底というものがどれほど便利かが分かる。

例えば、自然数の数列で位相空間を作るとしたら、先頭を基準に位相を作りたい場合、$B_{1}$ は先頭が $1$ の数列の集合で、$B_{2}$ は先頭が $2$ の数列の集合、$B_{k}$ は先頭が $k$ の数列の集合… といった方法でアプローチすることができる。問題は、$\mathscr{T}$ に合集 $B_{1} \cup B_{2}$ が存在しないことだ。なぜなら、先頭が $1$ または $2$ の数列が存在しないからだが、このとき$\mathscr{B} = \left\{ B_{k} \right\}_{k \in \mathbb{N}}$ で可能な全ての合集があるとすれば、仕事はずっと簡単になる。これがまさに基底で生成された位相を上手く使ったことになる。

判定法 1

基底の判定: 全集合 $X$ に対して、$\mathscr{B} \subset \mathscr{P} (X)$ が以下の二つの条件を満たすとき、$X$ の基底だ。

  • (i): $\displaystyle X = \bigcup_{B \in \mathscr{B}} B$
  • (ii): $x \in B_{1} \cap B_{2}$ である全ての $ B_{1} , B_{2} \in \mathscr{B}$ に対して、以下を満たす $B_{x} \in \mathscr{B}$ が存在する。 $$ x \in B_{x} \subset B_{1} \cap B_{2} $$

この判定法は、実際の問題解決などで有効に使うことができる定理なので、必ず覚えておくべきだ。教科書によっては、この判定法が定義となることもある。

局所基底は、基底とは違い、位相全体ではなく与えられた一点だけを扱う概念だ。言葉が長く難しいが、要約すると最終的には、$x$ を含む全ての開空間の中で最も「小さい」ものだけを集めても局所基底の条件を満たす。

例えば、距離空間を例に挙げると、$x$ を中心とする全ての開球の集合は、$x$ での局所基底になる。

基底と局所基底の関係

$X$ を位相空間としよう。

$\mathscr{B}$ が $X$ の基底であれば、$\mathscr{B}_{x} := \left\{ B \in \mathscr{B} \ | \ x \in B \right\}$ は $x \in X$ の局所基底だ。逆に、全ての $x \in X$ に対して $\mathscr{B}_{x}$ が局所基底であれば、$\displaystyle \mathscr{B} := \bigcup_{x \in X} \mathscr{B}_{x}$ は $X$ の基底だ。

注意事項

必要十分条件ではないので、逆が成立するためには、全ての点での局所基底を考える必要がある点に注意しよう。


  1. Munkres. (2000). Topology(2nd Edition): p78. ↩︎