精度行列
定義1
一変量分布において、分散$\sigma^{2}$の逆数$\frac{1}{\sigma^{2}}$を精度precisionという。
多変量分布において、共分散行列$\Sigma$の逆行列$\Lambda := \Sigma^{-1}$を精度行列precision matrixという。
説明
精度行列は共分散行列と同様に対称行列である。精度行列が存在するためには共分散行列が可逆行列でなければならないが、共分散行列は常に半正定値行列であるから、これは共分散行列が正定値行列であることと同じである。
なぜ精度と呼ぶのか?
共分散の逆行列をなぜ精度と呼ぶのか、$1$次元での例で見てみよう。正規分布$N(0, \sigma^{2})$について、$\sigma^{2}$を分布の分散という。分散はデータが平均からどれだけ散らばっているかを表す尺度であるから、分散が小さいほどデータが平均の近くに集まっているということである。したがって、分散の逆数$\frac{1}{\sigma^{2}}$は、データが平均の近くにどれだけ集まっているかを表す尺度として理解できる。分散が非常に小さい分布では、データをサンプリングするとほぼ同じ値が得られるはずであり、これを精度と呼べるわけである。

上の図は、分散がそれぞれ$4$、$1$、$0.05$である正規分布の確率密度関数と、各分布から抽出した標本$60$個を並べて描いたものである。精度$\frac{1}{\sigma^{2}}$が大きいほど、標本が平均$0$の周りの狭い区間に集中していることがわかる。
これを$n$次元に拡張すると、分散は共分散行列$\Sigma$に一般化され、分散の逆数は共分散行列の逆行列$\Sigma^{-1}$に一般化される。
性質
(a) 精度行列$\Lambda$は対称行列であり、正定値行列である。
