運動量演算子の固有関数
定理1
運動量演算子$\hat{p}$の固有値はすべての実数であり、固有値$p \in \mathbb{R}$に対応する固有関数$f_{p}$は以下の通りである。
$$ f_{p}(x) = \frac{1}{\sqrt{2\pi\hbar}} e^{\i p x / \hbar} $$
説明
運動量演算子の固有関数を求めてみると、複素指数関数、すなわち平面波の形で現れる。位置演算子の固有関数と同様に、実数全体にわたる連続なすべての値が固有値として可能だからである。このように固有値が連続な値として存在する場合を連続スペクトルという。連続スペクトルの場合、固有関数はヒルベルト空間に属さないため、正規直交条件である$\braket{f_{p^{\prime}} | f_{p}} = \delta_{p^{\prime} p}$を適用できない。連続スペクトルの固有関数は以下のようなディラック規格化を満たさなければならない。
$$ \braket{f_{p^{\prime}} | f_{p}} = \delta (p - p^{\prime}) $$
固有関数の完備性もまた級数ではなく積分の形で成立し、任意の波動関数$f$は以下のように固有関数の積分として展開される。
$$ f(x) = \int_{-\infty}^{\infty} c(p) f_{p}(x) \d p $$
ここで展開係数$c(p) = \braket{f_{p} | f}$はまさに$f$のフーリエ変換であり、これを運動量空間における波動関数と呼ぶ。実数の固有値だけが物理的に許される理由は、固有値$p$が複素数であれば固有関数$e^{\i p x / \hbar}$が$x \to \pm\infty$で発散し、規格化が不可能になるからである。
証明
$\hat{p}$を運動量演算子とする。$p$を演算子の固有値、$f_{p}$をこれに対応する固有関数とする。
$$ \hat{p} f_{p} = p f_{p} $$
運動量演算子は$\hat{p} = -\i\hbar \dfrac{\d}{\d x}$であるから、固有値方程式は次のような微分方程式となる。
$$ -\i\hbar \frac{\d}{\d x} f_{p}(x) = p f_{p}(x) \implies f_{p}^{\prime}(x) = \frac{\i p}{\hbar} f_{p}(x) $$
これは$1$階線形微分方程式であるから、その解は規格化定数$A$に対して以下の通りである。
$$ f_{p}(x) = A e^{\i p x / \hbar} $$
もし固有値$p$が実数ではなく$p = a + b\i$($b \ne 0$)である複素数ならば、固有関数は次の通りである。
$$ f_{p}(x) = A e^{\i a x / \hbar} e^{- b x / \hbar} $$
このとき後ろに掛かる$e^{-bx/\hbar}$によって$x \to +\infty$または$x \to -\infty$で関数が発散するため、規格化が不可能である。したがって物理的に許される固有値は実数のみである。
さて規格化定数$A$を決定しよう。位置演算子の固有関数と同様に$f_{p}$は二乗可積分ではないため通常の規格化ができないので、ディラック規格化を適用する。
$$ \braket{f_{p^{\prime}} | f_{p}} = \int_{-\infty}^{\infty} f_{p^{\prime}}^{\ast}(x) f_{p}(x) \d x = |A|^{2} \int_{-\infty}^{\infty} e^{\i (p - p^{\prime}) x / \hbar} \d x $$
ここでこの積分は通常の意味では収束しないが、少し難しい数学を使えばディラックのデルタ関数の積分表現$\int_{-\infty}^{\infty} e^{\i (p - p^{\prime}) x / \hbar} \d x = 2\pi\hbar \delta(p - p^{\prime})$であることが分かる。これを用いると次を得る。
$$ \braket{f_{p^{\prime}} | f_{p}} = 2\pi\hbar |A|^{2} \delta(p - p^{\prime}) $$
ディラック規格化条件$\braket{f_{p^{\prime}} | f_{p}} = \delta(p - p^{\prime})$が成立するには$2\pi\hbar |A|^{2} = 1$、すなわち$A = 1 / \sqrt{2\pi\hbar}$でなければならない。したがって規格化された運動量演算子の固有関数は以下の通りである。
$$ f_{p}(x) = \frac{1}{\sqrt{2\pi\hbar}} e^{\i p x / \hbar} $$
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David J. Griffiths. 양자역학(Introduction to Quantum Mechanics, 권영준 역) (2nd Edition, 2006), p101. ↩︎
