位置演算子の固有関数
定理1
位置演算子$\hat{x}$の固有値はすべての実数であり、固有値$y \in \mathbb{R}$に対応する固有関数$\phi_{y}$はディラックのデルタ関数である。
$$ \phi_{y}(x) = \delta (x - y) $$
説明
位置演算子の固有関数を求めてみると、ディラックのデルタ関数という特異な結果が得られる。これは実数全体にわたる連続的なすべての値が固有値として可能だからである。このように固有値が連続的な値として存在する場合を連続スペクトルという。連続スペクトルの場合、固有関数はヒルベルト空間に属さないため、正規直交条件である$\braket{\phi_{y^{\prime}} | \phi_{y}} = \delta_{y^{\prime} y}$を適用できない。連続スペクトルの固有関数は次のようなディラック規格化を満たさなければならない。
$$ \braket{\phi_{y^{\prime}} | \phi_{y}} = \delta (y - y^{\prime}) $$
固有関数の完備性もまた級数ではなく積分の形で成り立ち、任意の波動関数$f$は次のように固有関数の積分として展開される。
$$ f(x) = \int_{-\infty}^{\infty} c(y) \phi_{y}(x) \d y = \int_{-\infty}^{\infty} f(y) \delta (x - y) \d y $$
ここで展開係数は$c(y) = \braket{\phi_{y} | f} = f(y)$、すなわち波動関数の値そのものである。ディラックのデルタ関数は一点を除いたすべての場所で関数値が$0$である関数である。ある一つの粒子が同時に複数の場所に存在することはできないので、その粒子の位置は正確に一点でなければならず、したがってディラックのデルタ関数で表されるのが自然だと見ることができる。
証明
$\hat{x}$を位置演算子とする。$y$を固有値、$\phi_{y}$をこれに対応する固有関数とする。
$$ \hat{x} \phi_{y} = y \phi_{y} $$
位置演算子$\hat{x}$は$x$を掛けたものと同じであるので、次を得る。
$$ x \phi_{y} = y \phi_{y} \implies (x-y)\phi_{y}(x) = 0 $$
$x \ne y$であれば$(x-y) \ne 0$であるので、$\phi_{y}(x) = 0$でなければならない。すなわち$\phi_{y}$は$x \ne y$であるすべての場所で$0$の値を持たなければならない。$x = y$ではどんな値でも構わないので、次のようであると仮定しよう。
$$ \phi_{y}(x) = \begin{cases} a, & x = y \\ 0, & x \ne y \end{cases} $$
この関数が固有関数すなわち波動関数になるためには、二乗積分した値が$0$より大きくなければならない。そうしてこそ規格化が可能となり、確率的解釈が可能となるからである。ところが上の関数の積分は$0$である。すなわち$\phi_{y}$は積分の観点から見たとき事実上零関数なのである。
$$ \int_{-\infty}^{\infty} |\phi_{y}(x)|^{2} \d x = 0 $$
すると一点を除いたすべての場所で関数値が$0$でありながら積分したときその値が$0$でない関数の導入が必要となるが、それがまさにディラックのデルタ関数である。$\phi_{y}$を次のようなディラックのデルタ関数と見なせば、上のすべての条件を満たす。
$$ \phi_{y}(x) = \delta(x - y) $$
この場合、上でも説明したように規格化条件は次のようである。
$$ \braket{\phi_{y^{\prime}} | \phi_{y}} = \delta (y - y^{\prime}) $$
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David J. Griffiths. 양자역학(Introduction to Quantum Mechanics, 권영준 역) (2nd Edition, 2006), p103. ↩︎
