質量 (しつりょう)
定義1
質量massは物体が持つ基本的性質の一つで、物体の慣性の大きさを示す値だ。質量が大きいほど物体の運動状態を変化させにくい。
説明
質量はスカラーである物理量であり、$0$より大きいか等しい値を取る。
$$ m \ge 0 $$
人は軽い物体を押して動かすより重い物体を押して動かすほうがより大変だという経験を持っている。つまり重い物体は運動させにくく、そのような物体は「質量が大きい」と言う。したがって質量は物体がどれだけ重いか軽いかを示す量と見なせる。ただしここでの「重い」は日常的な表現であり、物理学的には運動の変化に対する抵抗の程度、すなわち慣性の大きさを意味する。ニュートンの運動法則では慣性とは運動の変化に抵抗する性質であると説明される。慣性が大きければ運動しにくく、慣性が小さければ運動しやすいということだ。この意味での質量を 慣性質量inertial massと呼ぶ。慣性質量 $m$ に関してニュートンの第2法則が成り立つ。
$$ \mathbf{F} = m\mathbf{a} $$
質量の値を定める一つの方法は二つの物体の相互作用を利用することである。二つの物体があるとする。各物体の質量を $m_{1}$、$m_{2}$ とする。そして二つの物体が互いに同じ大きさの力を与え合い反対方向に運動するとする。簡単に言えば二つの物体の間にバネを挟んで両側から押して放す状況を考えればよい。二つの物体はそれぞれ速度 $\mathbf{v}_{1}$、$\mathbf{v}_{2}$ で弾かれて飛び出す。このとき 二つの物体の質量の比 を以下のように定義する。
$$ \frac{m_{2}}{m_{1}}=\frac{ \left|\mathbf{v}_{1}\right| }{\left|\mathbf{v}_{2}\right|} $$
このとき物体1の質量 $m_{1}$ を基準にすれば他の物体(物質)の質量を決定できる。
重さ(重量)
日常的には質量よりも重さ(重量)という物理量の方が多く用いられる。質量は物体そのものが持つ性質であり、重さは重力によって物体が受ける力である。例えば地球と月で同じ物体の質量は変わらないが、月の重力は地球より小さいため重さはより小さくなる。物体の重さ $W$ は重力加速度 $g$ を用いて次のように表せる。
$$ W = mg $$
人が日常的に「体重が60キログラムだ」と言うのは厳密には誤りであり、「60キログラムである」あるいは「588ニュートンである」と言うべきだ。もちろんそう言い歩いたり他人に指摘すると社会的に排除される可能性が高い。
単位
国際単位系で定められた質量の単位は キログラムkilogram で、記号は $\mathrm{kg}$ である。かつてはキログラム原器と呼ばれる特定の実物の質量を基準に $1\mathrm{kg}$ を定義していた。しかし現在は自然定数に基づいてキログラムを定義する。現在のキログラムはプランク定数 $h$ の値を正確に固定することにより定義される。秒とメートルが定義されているとき、プランク定数の単位を $\mathrm{kg \cdot m^2 \cdot s^{-1}}$ と表した値が正確に以下のようになるようにキログラムを定義する。
$$ h = 6.62607015 \times 10^{-34} \mathrm{kg \cdot m^2 \cdot s^{-1}} $$
Grant R. Fowles and George L. Cassiday, Analytical Mechanics (7th Edition, 2005) ↩︎
