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物理学におけるスカラーとは何か? 📂数理物理学

物理学におけるスカラーとは何か?

定義

物理学での スカラーscalarとは、以下のように定義される物理量である。

  1. 方向を持たず、大きさのみを持つ物理量。1
  2. 座標系が変わっても変化しないinvariant物理量。2

説明

時間、質量温度などが代表的なスカラー物理量である。

  1. これと対照的に、方向と大きさの両方を持つ物理量をベクトルと呼ぶ。ベクトルは成分と呼ばれる値を複数持つが、スカラーは簡単に言えば一つだけの成分を持つベクトルと考えられる。もちろん厳密な物理学的観点からスカラーを定義する際に '座標変換に対する不変性'を強調する理由は、単に一つの数で表されているからといってすべてがスカラーであるわけではないからである。座標系が変わるとある規則(変換行列)に従って成分が変わるベクトルやテンソルとは異なり、スカラーはどの観測者が見てもその値が物理的に同一に保たれる最も基本的な物理量である。

  2. 物体の質量はどの座標を選んでもその値は変わらない。質量が $10$ $\mathrm{kg}$ の物体は デカルト座標系でも 球座標系でもその値は同じである。 一方でベクトルは座標系の影響を受け、同じ物理量でも表される成分値は座標系によって異なる。例えば、ある物体の位置と速度はデカルト座標系では以下のようになる。 $$ \begin{align*} \mathbf{r} &= x \hat{\mathbf{x}} + y \hat{\mathbf{y}} + z \hat{\mathbf{z}} \\ \mathbf{v} &= \dot{\mathbf{r}} = \dot{x} \hat{\mathbf{x}} + \dot{y} \hat{\mathbf{y}} + \dot{z} \hat{\mathbf{z}} \\ \end{align*} $$ 一方で球座標系では次のように表される。 $$ \begin{align*} \mathbf{r} &= r\hat{\mathbf{r}} \\ \mathbf{v} &=\dot{r} \hat {\mathbf{r}} +r \dot{\theta} \hat{ \boldsymbol{\theta}}+ r \dot{\phi} \sin{\theta} \hat{ \boldsymbol{\phi}} \end{align*} $$

数学的には $\mathbb{F}–$ベクトル空間が与えられているとき、ベクトル空間のである $\mathbb{F}$ の元を指す。


  1. Grant R. Fowles and George L. Cassiday. Analytical Mechanics (7th Edition, 2005), p0. ↩︎

  2. George B. Arfken and Hans J. Weber. MATHEMATICAL METHODS FOR PHYSICISTS (6E), p1. ↩︎