双線形形式とエルミート形式
定義1
二つのベクトル$\mathbf{x}, \mathbf{u} \in \mathbb{R}^{n}$が次のようであるとする。
$$ \mathbf{x}=\begin{bmatrix} x_{1} \\ x_{2} \\ \vdots \\ x_{n} \end{bmatrix},\quad \mathbf{u}^{T} = \begin{bmatrix} u_{1} & u_{2} & \cdots & u_{n} \end{bmatrix} $$
実数である定数$a_{ij} \in \mathbb{R} (1\le i,j \le n)$に対して、次のように定義される関数$A : \mathbb{R}^{n} \times \mathbb{R}^{n} \to \mathbb{R}$を二重線形形式bilinear formという。
$$ A(\mathbf{u},\mathbf{x}):=\sum \limits_{i,k=1}^{n} a_{ik}u_{i}x_{k} $$
二重線形形式で、定数$a_{ij} (1\le i,j \le n)$が複素数であり、$a_{ij}=\overline{a_{ji}}$を満たす場合、エルミート形式Hermite formという。
$$ A(\mathbf{u},\mathbf{x})=\sum \limits _{i,k=1} ^{n} a_{ik}u_{i}x_{k} = \mathbf{u}^{\ast} A \mathbf{x} $$
説明
端的に言えば、二重線形形式の文脈でエルミート行列とは、行列$A$がエルミート行列である場合である。
定数の行列を次のように記す。
$$ \quad A=\begin{bmatrix} a_{11} & a_{12} &\cdots & a_{1n} \\ a_{21} & a_{22} &\cdots & a_{2n} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{n1} & a_{n2} & \cdots & a_{nn} \end{bmatrix} $$
すると、二重線形形式は行列の積として表され、これを行列$A$に対応する二重線形形式ともいう。
$$ A(\mathbf{u},\mathbf{x})=\sum \limits_{i,k=1}^{n} a_{ik}u_{i}x_{k}= \mathbf{u}^{T}A\mathbf{x} $$
もし一次連立方程式が
$$ \begin{cases} a_{11}x_{1}+a_{12}x_{2}+\cdots +a_{1n}x_{n}&=y_{1} \\ a_{21}x_{1}+a_{22}x_{2}+\cdots +a_{2n}x_{n}&=y_{2} \\ &\vdots \\ a_{n1}x_{1}+a_{n2}x_{2}+\cdots +a_{nn}x_{n}&=y_{n} \end{cases} $$
として与えられた場合、各方程式に$u_{i}$を掛けてすべて足し合わせることで、下記のような二重線形形式を得ることができる。$I$は単位行列である。
$$ A(\mathbf{u},\mathbf{x})=\sum \limits_{i,k=1}^{n} a_{ik}u_{i}x_{k}=\sum \limits_{i=1}^{n}u_{i}y_{i}=I(\mathbf{u}, \mathbf{y}) $$
二次形式は、二重線形形式で$\mathbf{u} = \mathbf{x}$である特別な場合である。
参照
Howard Anton, Elementary Linear Algebra: Aplications Version (12th Edition, 2019), p416-417 ↩︎