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物理学における座標系と座標 📂数理物理学

物理学における座標系と座標

定義

それぞれの$n$次元の組$(a_{1}, a_{2}, \dots, a_{n})$が$n$次元空間の一点を一意に定めるとき、これらの$n$次元の組の集合を($n$次元の)座標系と呼び、座標系の要素$(a_{1}, a_{2}, \dots, a_{n})$をその点の座標という。

説明

物理学では普通$n \le 4$だ。

上の定義は高校から自然に使ってきた概念を再整理しただけに過ぎない。重要な点は、座標が一意の一点を定める必要があることだ。座標$(a_{1}, \dots, a_{n})$が与えられたら、これが意味する空間上の点はただ一つでなければならない。しかし逆に空間上の一点が与えられたら、それを表す座標$(a_{1}, \dots, a_{n})$は一意でないこともある。特に角度を使う座標系では三角関数のために軸上の点や原点などで複数の座標表示が存在することがある。

座標系

  • $\mathbb{R}$は実数の集合を意味する。
  • $\mathbb{R}^{n} = \overbrace{\mathbb{R} \times \cdots \times \mathbb{R}}^{n}$は$n$次元空間を意味する。

数直線は1次元の座標系である。

デカルト座標系

日常生活と最も密接で、直感的な座標系だ。物理学では、2次元のデカルト座標系である座標平面と、3次元のデカルト座標系である座標空間を主に扱う。3次元のデカルト座標系の座標は次のように表される。 $$ (x, y, z) \in \mathbb{R} \times \mathbb{R} \times \mathbb{R} = \mathbb{R}^{3} $$ だから、デカルト座標系の代わりに$(x, y, z)$座標系とも表現されることがある。これは以下の別の座標系でも適用される習慣だ。

デカルト座標系を直交座標系と呼ぶことは間違っていると思われる。デカルト座標系でない極座標系、球座標系、円柱座標系もすべて軸が互いに直交しているからだ。直交座標系はデカルト座標系を含むより大きな概念だ。

極座標系

極座標系は、2次元で放射状対称の運動を記述するのに便利な座標系だ。原点からの距離$r$と$x$軸からの角度$\theta$で2次元空間の一点を定める。 $$ (r,\theta) \in [0, \infty) \times [0, 2\pi) $$ **原点の座標は一意ではない。**異なる$\theta_{1}, \theta_{2}$に対して次が成り立つ。 $$ (0, \theta_{1}) = (0, \theta_{2}) $$

円柱座標系

3次元空間の一点を、$xy$平面への投影した際の長さ$\rho$(または$s$)と$x$軸からの角度$\phi$、そして$z$座標で表現する。 $$ (\rho, \phi, z) \in [0, \infty) \times [0, 2\pi) \times \mathbb{R} $$ **原点の座標は一意ではない。**異なる$\phi_{1}, \phi_{2}$に対して次が成り立つ。 $$ (0, \phi_{1}, 0) = (0, \phi_{2}, 0) $$ **$z-$軸の座標も一意ではない。**異なる$\phi_{1}, \phi_{2}$に対して次が成り立つ。 $$ (0, \phi_{1}, z) = (0, \phi_{2}, z) $$

球座標系

3次元空間で放射状対称の運動を記述するのに便利だ。極座標系の3次元への拡張である。原点からの距離$r$、天頂角$\theta$、方位角$\phi$で3次元空間の一点を定める。 $$ (r, \theta, \phi) \in [0, \infty) \times [0, \pi] \times [0, 2\pi) $$ 円柱座標系と同様に原点と$z$軸上の点の座標は一意ではない。

$\theta$と$\phi$を入れ替えて使うことがあるが、私はそのような表記は適切ではないと思う。意味を考えてもそうだし、ISOで定められた国際標準でも$(r, \theta, \phi)$だ。さらにウィキによると、アメリカの数学教科書では$(r, \phi, \theta)$のような表記を使うというが、ヤードポンド法を含むアメリカの単位系の不合理さを考えると、反省すべきだろう。