キュービット:量子コンピュータにおける情報の基本単位キュービット:量子コンピュータにおける情報の基本単位
定義
C 上のベクトル空間 C2の二つの単位ベクトル[10]、[01]をディラック記法で以下のように表記しよう。
∣0⟩=[10]∣1⟩=[01]
集合{∣0⟩,∣1⟩}の要素を キュビットqubit、量子ビットと呼ぶ。
C2のnテンソル積 (C2)⊗n=C2⊗⋯⊗C2nの標準基底
{∣0⟩⊗⋯⊗∣0⟩,…,∣1⟩⊗⋯⊗∣1⟩}
の要素を nキュビットnqubitと呼ぶ。
説明
キュビットはquantum bitの略語です。ビットbitが古典コンピューターで情報処理の最小単位であるならば、キュビットは量子コンピューターでその役割を果たしている。
nキュビットは次のように簡単に表示される。a=(a0,a1,…,an−1)∈{0,1}nをnビットと呼ぶならば、
∣a⟩=∣a0,a1,…,an−1⟩=∣a0a1…an−1⟩=∣a0⟩⊗∣a1⟩⊗⋯⊗∣an−1⟩
例:(C2)⊗2
最も簡単な例として(C2)⊗2=C2⊗C2≅C4の場合を具体的に見よう。2キュビットは次のように表記される。
∣00⟩=∣0,0⟩=∣0⟩⊗∣0⟩,∣01⟩=∣0,1⟩=∣0⟩⊗∣1⟩∣10⟩=∣1,0⟩=∣1⟩⊗∣0⟩,∣11⟩=∣1,1⟩=∣1⟩⊗∣1⟩
それぞれの2キュビットを行列で表すと、クロネッカー積の定義に従って次の通りである。
∣00⟩∣01⟩∣10⟩∣11⟩=∣0⟩⊗∣0⟩=[10]⊗[10]=1[10]0[10]=1000=∣0⟩⊗∣1⟩=[10]⊗[01]=1[01]0[01]=0100=∣1⟩⊗∣0⟩=[01]⊗[10]=0[10]1[10]=0010=∣1⟩⊗∣1⟩=[01]⊗[01]=0[01]1[01]=0001
したがって⟨ik∣jl⟩=δijδklである。このときδはクロネッカーデルタである。任意の(C2)⊗2の要素は次のようである。
(α0∣0⟩+α1∣1⟩)⊗(β0∣0⟩+β1∣1⟩)=α0β0∣0⟩⊗∣0⟩+α0β1∣0⟩⊗∣1⟩+α1β0∣1⟩⊗∣0⟩+α1β1∣1⟩⊗∣1⟩=α0β0∣00⟩+α0β1∣01⟩+α1β0∣10⟩+α1β1∣11⟩=α00∣00⟩+α01∣01⟩+α10∣10⟩+α11∣11⟩
特に{∣a⟩}a∈{0,1}2を(C2)⊗2の基底と呼ぶならば、任意の∣ψ⟩∈(C2)⊗2に対して、
∣ψ⟩=a∈{0,1}2∑⟨a∣ψ⟩∣a⟩=a∈{0,1}2∑ψa∣a⟩
∣ψ⟩,∣ξ⟩∈(C2)⊗2の内積は、
⟨ψ∣ξ⟩=a∈{0,1}2∑ψaξa
このときψaはψaの共役複素数である。
参照