行列の直和
📂行列代数行列の直和
定義
二つの行列 B∈Mm×n, C∈Mp×qの直和direct sumを次の (m+p)×(n+q)行列 Aとして定義し、B⊕Cと表記する。
A=B⊕C:=b11⋮bm10⋮0⋯⋱⋯⋯⋱⋯b1n⋮bmn0⋮00⋮0c11⋮cp1⋯⋱⋯⋯⋱⋯0⋮0c1q⋮cpq
Aij:=⎩⎨⎧[B]ij[C](i−m),(j−n)0for 1≤i≤m, 1≤j≤nfor m+1≤i≤p+m, n+1≤j≤q+notherwise
ブロック行列形式で表すと、
A=[BOpnOmqC]
このとき、Oは零行列だ。
一般化
行列 B1,B2,…,Bkの直和を以下のように再帰的に定義する。
B1⊕B2⊕⋯⊕Bk:=(B1⊕B2⊕⋯⊕Bk−1)⊕Bk
A=B1⊕B2⊕⋯⊕Bkならば、
A=B1O⋮OOB2⋮O⋯⋯⋱⋯OO⋮Bk
説明
簡単に言えば、行列でブロック対角行列を作ることだ。
B1⊕B2⊕⋯⊕Bk=diagB1B2⋮Bk
具体的な例としてB1=[111111]、B2=[2]、B3=333333333とすると、
B1⊕B2⊕B3=110000110000110000002000000333000333000333
通常の場合、行列の直和よりも部分空間の直和に先に触れるかもしれないが、以下の定理を見ると、このような定義がなぜ直和と呼ばれるか十分納得がいく。線形変換T:V→Vが与えられたとき、V=W1⊕⋯⊕Wkであれば、Tの行列表現は射影T∣Wiの行列表現の直和として現れるため、このような行列の演算を直和と呼ぶ理由はないわけがない。
定理
T:V→Vを有限次元ベクトル空間V上の線形変換とする。W1,…,WkをT-不変部分空間、VをWiたちの直和とする。
V=W1⊕⋯⊕Wk
βiをWiの順序基底、β=β1∪⋯∪βkとする。(その場合、βはVの基底である)そして、A=[T]β、Bi=[T∣W]βiとすると、次が成り立つ。
A=B1⊕B2⊕⋯⊕Bk=B1O⋮OOB2⋮O⋯⋯⋱⋯OO⋮Bk
証明
数学的帰納法で証明する。
k=2のとき成り立つ。
v∈β1とする。βがVの基底なので、Tv∈Vはβの線形結合として表される。しかしW1が不変部分空間なので、Tv∈W1が成り立つ。したがって、Tvの線形結合でβ2の要素の係数は全部0である。これは、n=dim(W1)のとき、座標ベクトル[Tv]βの成分がn+1番目以降は全部0であることを意味する。したがって、
[T∣W1v]β1=b1⋮bnand[Tv]β=b1⋮bn0⋮0
同様に、v∈β2、m=dim(W2)ならば、Tv∈W2であり、座標ベクトルは以下のようになる。
[T∣W2v]β2=bn+1⋮bn+mand[Tv]β=0⋮0bn+1⋮bn+m
したがって、
[T]β=[[T∣W1]β1OO[T∣W2]β2]
k−1のとき成り立つなら、kのときも成り立つ。
W=W1⊕⋯⊕Wk−1、βW=β1∪⋯∪βk−1とする。k−1のとき成り立つと仮定すると、
[T∣W]βW=[T∣W1]β1⋮O⋯⋱⋯O⋮[T∣Wk−1]βk−1
しかしV=W⊕Wk、β=βW∪βkであり、k=2のとき成り立つので、
[T]β=[[T∣W]βWOO[T∣Wk]βk]=[T∣W1]β1⋮OO⋯⋱⋯⋯O⋮[T∣Wk−1]βk−1OO⋮O[T∣Wk]βk
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