logo

不変部分空間の直和とその特性多項式 📂線形代数

不変部分空間の直和とその特性多項式

定理1

$T : V \to V$を有限次元のベクトル空間$V$上の線形変換としよう。$V$が$T$-不変部分空間$W_{i}$たちの直和であると仮定しよう。

$$ V = W_{1} \oplus W_{2} \oplus \cdots \oplus W_{k} $$

$f_{i}(t)$を制限$T|_{W_{i}}$の特性多項式としよう。すると、$T$の特性多項式$f(t)$は以下のようになる。

$$ f(t) = f_{1}(t) \cdot f_{2}(t) \cdot \cdots \cdot f_{k}(t) $$

証明

数学的帰納法で証明する。

  • $k=2$のとき成り立つ。

    $\beta_{1}, \beta_{2}$を$W_{1}, W_{2}$の順序基底としよう。そして、$\beta = \beta_{1} \cup \beta_{2}$とする。すると、直和の性質により、$\beta$は$V$の順序基底である。

    これから、$A = \begin{bmatrix} T \end{bmatrix}_{\beta}$、$B_{1} = \begin{bmatrix} T_{W_{1}} \end{bmatrix}_{\beta_{1}}$、$B_{2} = \begin{bmatrix} T_{W_{2}} \end{bmatrix}_{\beta_{2}}$としよう。すると、$A$は以下のようなブロック行列として表される。 $$ A = \begin{bmatrix} B_{1} & O \\ O & B_{2} \end{bmatrix} $$ ここで、$O$を適切なサイズのゼロ行列としよう。すると、ブロック行列の行列式により、 $$ f(t) = \det(A - tI) = \det(B_{1} - tI) \det(B_{2} - tI) = f_{1}(t) \cdot f_{2}(t) $$

  • $k-1 \ge 2$のとき成り立つと仮定すると、$k$でも成り立つ。

    $V$を部分空間$W_{i}$たちの直和としよう。 $$ V = W_{1} \oplus W_{2} \oplus \cdots \oplus W_{k} $$ $W$を$W_{i}(1\le i \le k-1)$たちの和としよう。 $$ W = W_{1} + W_{2} + \cdots + W_{k-1} $$ すると、$W$は$T$-不変であり、$V = W \oplus W_{k}$が成り立つ。$k=2$のときの証明により、$g(t)$を$T|_{W}$の特性多項式とすれば、$f(t) = g(t)f_{k}(t)$が成り立つ。実際には、$W = W_{1} \oplus W_{2} \oplus \cdots \oplus W_{k-1}$が成り立ち、仮定により$g(t) = f_{1}(t) \cdots f_{k-1}(t)$が成り立つ。したがって、 $$ f(t) = g(t)f_{k}(t) = f_{1}(t) f_{2}(t) \cdots f_{k}(t) $$


  1. Stephen H. Friedberg, Linear Algebra (4th Edition, 2002), p319-320 ↩︎