べき乗写像の零空間
定理1
$n$次元 ベクトル空間 上の線形変換 $T : V \to V$が冪零だとする。
$$ T^{p} = T_{0} $$
ここで、$T_{0}$はゼロ変換だ。$N(T)$を $T$の零空間とする。すると、次が成立する。
すべての$i \in \mathbb{N}$に対して、$N(T^{i}) \subset N(T^{i+1})$である。
$1 \le i \le p-1$に対して、次を満たす$N(T^{i})$たちの順序基底$\beta_{i}$が存在する。 $$ \beta_{i} \subset \beta_{i+1} $$
2.の方法で得られた$N(T^{p}) = V$の順序基底を$\beta = \beta_{p}$とする。すると、行列表現$\begin{bmatrix} T \end{bmatrix}_{\beta}$は上三角行列である。
$T$の特性多項式は$(-1)^{n}t^{n}$である。したがって、$T$は分解され、$T$の固有値は$0$だけである。
説明
零空間は$V$の部分空間なので、$N(T^{i})$たちは徐々に大きくなる$V$の部分空間たちである。真の部分空間は最大$p-1$まで存在する。 $$ \left\{ \mathbf{0} \right\} \le N(T^{1}) \le N(T^{2}) \le \cdots \le N(T^{p}) = V $$
冪零の固有値が$0$だけであることは、別の証明で簡単に示すことができる。
証明
1.
もし$T^{i}\mathbf{v} = \mathbf{0}$ならば、$T^{i+1}\mathbf{v} = TT^{i}\mathbf{v} = T\mathbf{0} = \mathbf{0}$である。
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2.
$N(T^{1})$の順序基底の中から一つ$\beta_{1}$を選ぼう。すると、1.の結果に基づいて、$\beta_{1}$を拡張して$N(T^{2})$の順序基底になる$\beta_{2}$を得ることができる。これを繰り返して$\beta_{i}$を得れば証明完了。
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Stephen H. Friedberg, Linear Algebra (4th Edition, 2002), p512-513 ↩︎