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べき乗写像の零空間 📂線形代数

べき乗写像の零空間

定理1

nn次元 ベクトル空間 上の線形変換 T:VVT : V \to V冪零だとする。

Tp=T0 T^{p} = T_{0}

ここで、T0T_{0}ゼロ変換だ。N(T)N(T)TT零空間とする。すると、次が成立する。

  1. すべてのiNi \in \mathbb{N}に対して、N(Ti)N(Ti+1)N(T^{i}) \subset N(T^{i+1})である。

  2. 1ip11 \le i \le p-1に対して、次を満たすN(Ti)N(T^{i})たちの順序基底βi\beta_{i}が存在する。 βiβi+1 \beta_{i} \subset \beta_{i+1}

  3. 2.の方法で得られたN(Tp)=VN(T^{p}) = Vの順序基底をβ=βp\beta = \beta_{p}とする。すると、行列表現[T]β\begin{bmatrix} T \end{bmatrix}_{\beta}上三角行列である。

  4. TT特性多項式(1)ntn(-1)^{n}t^{n}である。したがって、TT分解されTTの固有値は00だけである。

説明

  1. 零空間はVVの部分空間なので、N(Ti)N(T^{i})たちは徐々に大きくなるVVの部分空間たちである。真の部分空間は最大p1p-1まで存在する。 {0}N(T1)N(T2)N(Tp)=V \left\{ \mathbf{0} \right\} \le N(T^{1}) \le N(T^{2}) \le \cdots \le N(T^{p}) = V

  2. 冪零の固有値が00だけであることは、別の証明で簡単に示すことができる。

証明

1.

もしTiv=0T^{i}\mathbf{v} = \mathbf{0}ならば、Ti+1v=TTiv=T0=0T^{i+1}\mathbf{v} = TT^{i}\mathbf{v} = T\mathbf{0} = \mathbf{0}である。

2.

N(T1)N(T^{1})の順序基底の中から一つβ1\beta_{1}を選ぼう。すると、1.の結果に基づいて、β1\beta_{1}を拡張してN(T2)N(T^{2})の順序基底になるβ2\beta_{2}を得ることができる。これを繰り返してβi\beta_{i}を得れば証明完了。


  1. Stephen H. Friedberg, Linear Algebra (4th Edition, 2002), p512-513 ↩︎