多項式ベクトル空間
定義1
多項式
体$F$から係数を持つ多項式polynomialは、非負の整数$n$に対して次の形を意味する。
$$ \begin{equation} f(x) = a_{n}x^{n} + a_{n-1}x^{n-1} + \cdots + a_{1}x + a_{0} \end{equation} $$
ここで、それぞれの$a_{k} \in F$を$x^{k}$の係数coefficientという。$a_{n}=a_{n-1}=\cdots=a_{0}=0$の場合は、$f(x)$をゼロ多項式zero polynomialという。
多項式の次数degreeは、$(1)$の形で係数が$0$ではない$x$のもっとも大きい指数を意味する。$0$ではない定数$c$に対して、$f(x) = c$の次数は$0$であり、便宜上ゼロ多項式の次数を$-1$と定義する。
多項式ベクトル空間
$f, g$を$F$から係数を持つ多項式とする。
$$ f(x) = a_{n}x^{n} + a_{n-1}x^{n-1} + \cdots + a_{1}x + a_{0} $$
$$ g(x) = b_{m}x^{m} + b_{m-1}x^{m-1} + \cdots + b_{1}x + b_{0} $$
一般性を失わずに$m \le n$と仮定し、$b_{m+1}=b_{m+2}=\cdots=b_{n}=0$と定義する。すると$g(x)$を次のように書ける。
$$ g(x) = b_{n}x^{n} + b_{n-1}x^{n-1} + \cdots + b_{1}x + b_{0} $$
これで、二つの多項式$f(x)$と$g(x)$の和を次のように定義しよう。
$$ f(x) + g(x) = (a_{n} + b_{n})x^{n} + (a_{n-1} + b_{n-1})x^{n-1} + \cdots (a_{1} + b_{1})x + (a_{0} + b_{0}) $$
$c \in F$に対して、スカラー乗算を次のように定義する。
$$ cf(x) = ca_{n}x^{n} + ca_{n-1}x^{n-1} + \cdots + ca_{1}x + ca_{0} $$
すると、この加算とスカラー乗算に対して、$F$から係数を持つ全ての多項式の集合は$F$-ベクトル空間になり、これを$P(F)$と表記する。
説明
次数が$n$以下の全ての多項式の集合を$P_{n}(F)$と表記する。$P(F)$は任意の次数の全ての多項式を含み、$P_{n}(F)$は$n$以下の全ての多項式を含む。両方とも無限集合であり、両方とも多項式の集合(無限級数の集合ではない)であることに注意しよう。
$$ P(F) = \left\{ a_{n}x^{n} + \cdots + a_{1}x + a_{0} : n \in \mathbb{N}, a_{i} \in F \right\} $$
$$ P_{n}(F) = \left\{ a_{k}x^{k} + \cdots + a_{1}x + a_{0} : 1 \le k \le n, a_{i} \in F \right\} $$
また、$P(F)$は全ての次数の多項式を含むので無限次元だが、$P_{n}(F)$は$n$次元である。
Stephen H. Friedberg, Linear Algebra (4th Edition, 2002), p9-10 ↩︎