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微分多様体上で定義されるテンソル 📂幾何学

微分多様体上で定義されるテンソル

定義1

$M$を$n$次元の微分可能多様体、$\mathcal{D}(M)$を$M$上の微分可能な関数の集合、$\mathfrak{X}(M)$を$M$上の全てのベクトル場の集合とする。

$$ \mathcal{D}(M) := \left\{ \text{all real-valued functions of class } C^{\infty} \text{ defined on } M \right\} $$

$$ \frak{X}(M) := \left\{ \text{all vector fileds of calss } C^{\infty} \text{ on } M \right\} $$

次のような多重線形関数$T$を**$M$上の$r$次テンソル**tensor of order $r$ on $M$と呼ぶ。

$$ T : \overbrace{\frak{X}(M) \times \cdots \times \frak{X}(M)}^{r} \to \mathcal{D}(M) $$

説明

$\frak{X}(M)$は$\mathcal{D}(M)$上の加群になる。定義によれば以下が成立する。全ての$X, Y \in \frak{X}(M),\ f,g\in \mathcal{D}(M)$に対して、

$$ T(Y_{1}, \dots, fX + gY, \dots, Y_{r}) = fT(Y_{1}, \dots, X, \dots, Y_{r}) + gT(Y_{1}, \dots, Y, \dots, Y_{r}) $$

テンソルの特徴は、座標系に依存せず、各点での値にのみ依存することだ。これを説明するために、点$p \in M$を固定し、$p$の近くで$\left\{ E_{i}(p) \right\}$が接空間$T_{p}M$の基底になるようなベクトル場$E_{i}, \dots, E_{n} \in \frak{X}(M)$を考える。このような$\left\{ E_{i} \right\}$を$U$上のムービングフレームmoving frame, 動く枠と呼ぶ。今、ベクトル場$Y_{i}$の$U$への縮小写像をムービングフレーム$\left\{ E_{i} \right\}$で次のように表現しよう。

$$ Y_{1} = \sum_{i_{1}}y_{i_{1}}E_{i_{1}},\quad \dots,\quad Y_{r} = \sum_{i_{r}}y_{i_{r}}E_{i_{r}} $$

そして、$Y_{i}$と点$p$での**「値だけ」**同じ他のベクトル場$\left\{ Z_{j} = \sum z_{k_{j}}E_{k_{j}} \right\} \subset \frak{X}(M)$を考えよう。

$$ \begin{align*} && Z_{j}(p) &= Y_{j}(p) \\ \implies && z_{k_{j}}(p)E_{k_{j}}(p) &= y_{k_{j}}(p)E_{k_{j}}(p) \\ \implies && z_{k_{j}}(p) &= y_{k_{j}} \end{align*} $$

すると次が得られる。

$$ \begin{align*} T(Y_{1}, Y_{2}, \dots, Y_{n})(p) &= y_{i_{1}}(p)\cdots y_{i_{r}}(p) T(E_{i_{1}}(p), \dots, E_{i_{r}}(p)) \\ &= z_{i_{1}}(p)\cdots z_{i_{r}}(p) T(E_{i_{1}}(p), \dots, E_{i_{r}}(p)) \\ &= T(Z_{1}, Z_{2}, \dots, Z_{n})(p) \end{align*} $$

したがって、$T(Y_{1}, Y_{2}, \dots, Y_{n})(p)$は$Y_{i}$の$p$での値にのみ依存し、座標系には依存しない。

曲率テンソル

以下のように定義されるリーマン曲率$R$は、$4$次のテンソルである。

$$ R : \frak{X}(M) \times \frak{X}(M) \times \frak{X}(M) \times \frak{X}(M) \to \mathcal{D}(M) $$

$$ R(X, Y, Z, W) = \left\langle R(X, Y)Z, W \right\rangle, \quad X, Y, Z, W \in \frak{X}(M) $$

ムービングフレーム$\left\{ X_{i} = \dfrac{\partial }{\partial x_{i}} \right\}$に対して、

$$ R(X_{i}, X_{j}, X_{k}, X_{l}) = R_{ijkl} $$

メトリックテンソル

$$ g : \frak{X}(M) \times \frak{X}(M) \to \mathcal{D}(M) $$

$$ g(X, Y) = \left\langle X, Y \right\rangle, \quad X, Y \in \frak{X}(M) $$

リーマンメトリック$g$は、$2$次のテンソルである。

接続

$$ \nabla : \frak{X}(M) \times \frak{X}(M) \times \frak{X}(M) \to \mathcal{D}(M) $$

$$ \nabla(X, Y, Z) = \left\langle \nabla_{X}Y, Z \right\rangle, \quad X, Y, Z \in \frak{X}(M) $$

上記のように定義されるレビ・チビタ接続$\nabla$は、$Y$成分に対して線形ではないため、テンソルではない。

参照


  1. Manfredo P. Do Carmo, Riemannian Geometry (Eng Edition, 1992), p100-101 ↩︎