左乗算変換(行列変換)
定義1
体 $F$について、$A \in M_{m \times n}(F)$としよう。以下のように定義される$L_{A}$を左側乗算変換left-multiplication transformationという。
$$ \begin{align*} L_{A} : F^{n} &\to F^{m} \\ x &\mapsto Ax \end{align*} $$
この時、$Ax$は$A$と$x$の行列の積である。
説明
体について話して、行列変換をもっと抽象的に記述したものである。
定理
$A \in M_{m \times n}(F)$としよう。そうすると、$L_{A}$は線形変換である。また、$B \in M_{m \times n}(F)$と$\beta, \gamma$がそれぞれ$F^{n}, F^{m}$の標準順序基底である時、以下が成り立つ。
(a) $\begin{bmatrix} L_{A} \end{bmatrix}_{\beta}^{\gamma} = A$
(b) $L_{A} = L_{B} \iff A = B$
(c) $L_{A + B} = L_{A} + L_{B}$かつ$L_{aA} = a L_{A} \forall a \in F$であれば、
(d) もし$T : F^{n} \to F^{m}$が線形変換なら、$T = L_{C}$であるような$m \times n$行列$C$が存在する。(実際には$C = \begin{bmatrix} T \end{bmatrix}_{\beta}^{\gamma}$である)
(e) もし$E$を$n \times p$行列とするなら、$L_{AE} = L_{A} L_{E}$である。
(f) もし$m=n$ならば、$L_{I_{n}} = I_{F^{n}}$である。この時、左辺の$I_{n}$は$n\times n$単位行列であり、右辺の$I_{F^{n}}$は$I_{F^{n}} : F^{n} \to F^{n}$単位変換である。
Stephen H. Friedberg, Linear Algebra (4th Edition, 2002), p92-93 ↩︎