冪零行列
定義1
行列 に対して、を満足する正の数が存在すれば、を冪零nilpotentという。このとき、は 零行列である。
説明
nilは「零」あるいは「無」を意味する。potentの意味は「有力な」であり、potentialの語幹である。したがってnilpotentという言葉は「になる可能性/潜在力があるもの」と受け取れば良い。「冪」は数学で累乗を意味し、「零」は数字を指す。したがって冪零という言葉は文字通り「累乗して零になる」という意味である。
定理
証明
1
[2]
は正方行列であるためシュア分解が存在し、あるユニタリ行列 と上三角行列 に対してのように表せる。のすべての固有値がであるため、は対角成分がすべてである順三角行列であり、正方順三角行列は冪零行列であるためはあるに対しての冪零行列である。すると少なくともに対してであるためも冪零行列である。
零ベクトルをのように表す。
冪零行列のある固有値とそれに対応する固有ベクトルをとすると、のように置ける。両辺にを引き続き掛けると、に対して次が成立する。
これはすべての固有ベクトルに対して常に成立しなければならないため、のすべての固有値はである。
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3
証明は省略する4。
参照
Stephen H. Friedberg, Linear Algebra (4th Edition, 2002), p229 ↩︎