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冪零行列 📂行列代数

冪零行列

定義1

$n \times n$ 行列 $A$に対して、$A^{k} = O$を満足する正の数$k$が存在すれば、$A$を冪零nilpotentという。このとき、$O$は$n \times n$ 零行列である。

説明

nil.png

nilは「零」あるいは「無」を意味する。potentの意味は「有力な」であり、potentialの語幹である。したがってnilpotentという言葉は「$0$になる可能性/潜在力があるもの」と受け取れば良い。「冪」は数学で累乗を意味し、「零」は数字$0$を指す。したがって冪零という言葉は文字通り「累乗して零になる」という意味である。

定理

証明

1

数学的帰納法で示される。

[2]

$(\implies)$ 2

$A$は正方行列であるためシュア分解が存在し、あるユニタリ行列 $Q$と上三角行列 $T$に対して$A = Q T Q^{\ast}$のように表せる。$A$のすべての固有値が$0$であるため、$T$は対角成分がすべて$0$である順三角行列であり、正方順三角行列は冪零行列であるため$T$はある$k \in \mathbb{N}$に対して$T^{k} = O$の冪零行列である。すると少なくとも$k$に対して$A^{k} = Q T^{k} Q^{*} = O$であるため$A$も冪零行列である。

$(\impliedby)$ 3

零ベクトルを$\mathbf{0}$のように表す。 $$ \exists k \in \mathbb{N} : A^{k} = O $$
冪零行列$A$のある固有値$\lambda$とそれに対応する固有ベクトルを$\mathbf{v}$とすると、$\lambda \mathbf{v} = A \mathbf{v}$のように置ける。両辺に$A$を引き続き掛けると、$k$に対して次が成立する。 $$ \lambda^{k} \mathbf{v} = A^{k} \mathbf{v} = O \mathbf{v} = \mathbf{0} $$
これはすべての固有ベクトル$\mathbf{v} \ne \mathbf{0}$に対して常に成立しなければならないため、$A$のすべての固有値は$\lambda = 0$である。

3

証明は省略する4

参照