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微分多様体上の平行なベクトル場 📂幾何学

微分多様体上の平行なベクトル場

定義1

$M$を与えられたアフィン接続とする微分多様体$\nabla$としよう。曲線$c : I \to M$に沿ったベクトル場$V$が次の条件を満たすなら、平行と言われる。

$$ \dfrac{DV}{dt} = 0,\quad \forall i \in I $$

定理

$M$をアフィン接続とする微分多様体$\nabla$としよう。$c : T \to M (t\in I)$を微分可能な曲線としよう。$V_{0}$を$c(t_{0})$での接ベクトルとしよう。

$$ V_{0} \in T_{c(t_{0})}M $$

すると、$V(t_{0}) = V_{0}$を満たす$c$に沿った平行なベクトル場$V$が唯一存在する

説明

平行なベクトル場が良い理由は、微分すると$0$になるため、計算量が減って便利である。

上記の定理により、$V(t)$は以下のように表されるため、$V(t)$を$V_{0}$の平行移動と言う。

図1.png

証明

戦略: 全ての$t \in I$に対して、平行なベクトル場が存在する近傍があることを示すことにより証明する。その後、その部分の終わりを新しい出発点として取り、そこからある近傍までの存在が保証されるため、全体の領域に対して定理が成立する。


座標系$\mathbf{x} : U \to M$を一つ選ぼう。$c(I)$がある座標近傍$\mathbf{x}(U)$に含まれると仮定しよう。

$$ c(t) = \mathbf{x}(c_{1}(t), \dots, c_{n}(t)) $$

$t_{0}$での接ベクトルを$V_{0} = \sum_{j} V_{0}^{j} \dfrac{\partial }{\partial x_{j}}$としよう。

  • Part 1. 唯一性

    今、$V(t_{0}) = V_{0}$を満たす$c$に沿った平行なベクトル場$V$が$\mathbf{x}(U)$に存在すると仮定しよう。すると、平行なベクトル場の定義により、以下が成立する。

    $$ \begin{align*} 0 = \dfrac{DV}{dt} =&\ \dfrac{D}{dt} \left( \sum_{j} V_{j} \dfrac{\partial }{\partial x_{j}} \right) = \sum_{j} \dfrac{D}{dt} \left( V_{j} \dfrac{\partial }{\partial x_{j}} \right) \\ =&\ \sum_{j} \dfrac{d V_{j}}{d t} \dfrac{\partial }{\partial x_{j}} + \sum_{j} V_{j} \nabla_{\frac{dc}{dt}} \dfrac{\partial }{\partial x_{j}} \end{align*} $$

    この時、$\dfrac{dc}{dt} = \sum\limits_{i}\dfrac{d c_{i}}{d t} \dfrac{\partial }{\partial x_{i}}$であり、$\nabla_{\frac{\partial }{\partial x_{i}}}\dfrac{\partial }{\partial x_{j}} = \sum_{k} \Gamma_{ij}^{k} \dfrac{\partial }{\partial x_{k}}$であるので、次を得る。

    $$ \begin{align*} 0 =&\ \sum_{j} \dfrac{d V_{j}}{d t} \dfrac{\partial }{\partial x_{j}} + \sum_{j}V_{j} \nabla_{\sum_{i}\frac{dc_{i}}{dt}\frac{\partial }{\partial x_{i}}} \dfrac{\partial }{\partial x_{j}} \\ =&\ \sum_{j} \dfrac{d V_{j}}{d t} \dfrac{\partial }{\partial x_{j}} + \sum_{i,j}V_{j}\frac{dc_{i}}{dt}\nabla_{\frac{\partial }{\partial x_{i}}} \dfrac{\partial }{\partial x_{j}} \\ =&\ \sum_{j} \dfrac{d V_{j}}{d t} \dfrac{\partial }{\partial x_{j}} + \sum_{i,j}V_{j}\frac{dc_{i}}{dt}\sum_{k} \Gamma_{ij}^{k} \dfrac{\partial }{\partial x_{k}} \\ =&\ \sum_{j} \dfrac{d V_{j}}{d t} \dfrac{\partial }{\partial x_{j}} + \sum_{i,j,k}V_{j}\frac{dc_{i}}{dt} \Gamma_{ij}^{k} \dfrac{\partial }{\partial x_{k}} \\ \end{align*} $$

    $j$はダミーインデックスなので、最初の項のインデックスを$k$に変えて整理すると、次を得る。

    $$ 0 = \sum_{k} \left( \dfrac{d V_{k}}{d t} + \sum_{i,j}V_{j}\frac{dc_{i}}{dt} \Gamma_{ij}^{k} \right) \dfrac{\partial }{\partial x_{k}} $$

    このベクトルが$0$であるためには、全ての係数が$0$でなければならないので、次を得る。

    $$ \begin{equation} 0 = \dfrac{d V_{k}}{d t} + \sum_{i,j}V_{j}\frac{dc_{i}}{dt} \Gamma_{ij}^{k}, \quad k=1,\dots,n \end{equation} $$

    これはODEシステムである。従って、初期値$v_{k}(t_{0}) =V_{0}^{k}$が与えられているので、ピカールの定理により、$V$は唯一であることが分かる。

  • Part 2. 存在性

    $(1)$のようなODEシステムを考えてみよう。すると、ピカールの定理により、全ての$t \in I$に対して解が存在する。従って、我々が描写する$V$が存在することが分かる。


  1. Manfredo P. Do Carmo, Riemannian Geometry (Eng Edition, 1992), p52-53 ↩︎