順序基底と座標ベクトル
定義1
$V$を有限次元ベクトル空間としよう。$V$の基底に特定の順序が与えられた場合、これを順序基底という。
$\beta = \left\{ \mathbf{v}_{1}, \dots, \mathbf{v}_{n} \right\}$を$V$の順序基底とする。すると、基底表示の一意性により、$\mathbf{v} \in V$に対して、以下のように成立するスカラー$a_{i}$が唯一に存在する。
$$ \mathbf{v} = a_{1}\mathbf{v}_{1} + \dots a_{n}\mathbf{v}_{n} $$
$a_{1},\dots,a_{n}$を基底$\beta$に関する$\mathbf{v}$の座標と言い、$i$番目の座標を$i$番目の成分として持つ行列を基底$\beta$に関する$\mathbf{v}$の座標ベクトルまたは座標行列と言い、$[\mathbf{v}]_{\beta}$のように表記する。
$$ [\mathbf{v}]_{\beta} = \begin{bmatrix} a_{1} \\ a_{2} \\ \vdots \\ a_{n} \end{bmatrix} $$
また、順序基底$\beta$を座標系と言う。
説明
基底は集合として定義されるが、集合を表現する際の要素の列挙順序は関係ない、つまり$\alpha = \left\{ \mathbf{e}_{1}, \mathbf{e}_{2}, \mathbf{e}_{3} \right\} = \left\{ \mathbf{e}_{2}, \mathbf{e}_{3}, \mathbf{e}_{1} \right\} = \beta$である。したがって、‘座標’という概念を抽象化するためには、基底の要素に順序を与える必要がある。今、$\alpha, \beta$を順序基底とすると、
$$ \alpha = \left\{ \mathbf{e}_{1}, \mathbf{e}_{2}, \mathbf{e}_{3} \right\} \ne \left\{ \mathbf{e}_{2}, \mathbf{e}_{3}, \mathbf{e}_{1} \right\} = \beta $$
$[\mathbf{v}_{i}]_{\beta} = \mathbf{e}_{i}$が成立する。$\mathbf{e}_{i}$は標準基底である。
関数$T : \mathbf{v} \mapsto [\mathbf{v}]_{\beta}$は$V$から$\mathbb{R}^{n}$への線形変換となる。
ベクトル空間$\mathbb{R}^{n}$に対して、$\left\{ \mathbf{e}_{1}, \dots, \mathbf{e}_{n} \right\}$を標準順序基底と言う。
Stephen H. Friedberg, Linear Algebra (第4版, 2002), p79-80 ↩︎