フルランク行列の性質
統括1
$A$を$m \times n$行列としよう。すると、$A$がフルランクを持つための必要十分条件は$A^{T}A$が可逆行列であることだ。
証明
$(\Longrightarrow)$
$A$がフルランクを持つと仮定しよう。$A^{T}A$は$n \times n$正方行列なので、線形系 $A^{T}A \mathbf{x} = \mathbf{0}$が自明解のみを持つことを示せば良い。これは可逆である同値条件による。$\mathbf{x}$を任意の解とすると、$A \mathbf{x}$は$A^{T}$の零空間に属する。また、$A \mathbf{x}$は$A$の列空間に属する。だが、この2つは互いに直交補空間である。
$$ W \cap W^{\perp} = \left\{ \mathbf{0} \right\} $$
したがって、$A \mathbf{x} = \mathbf{0}$である。しかし、$A$がフルランクを持つと仮定したので、これを満たす$\mathbf{x}$は自明解のみである。したがって、$A^{T}A$は可逆である。
$(\Longleftarrow)$
$A^{T}A$が可逆であると仮定しよう。すると、以下の線形系は自明解のみを持つ。
$$ A^{T}A \mathbf{x} = \mathbf{0} $$
すると、$A \mathbf{x} = \mathbf{0}$が成立し、この線形系も自明解のみを持つことになる。したがって、同値条件により、$A$はフルランクを持つ。
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Howard Anton, Elementary Linear Algebra: Aplications Version (12th Edition, 2019), p422 ↩︎