断層撮影におけるファントムとは?
定義
断層撮影の数値的シミュレーションに使われる架空の画像をファントムphantomという。
説明
断層撮影で扱われる問題は、ある関数$f$とあるオペレータ$A$について、$Af$が与えられた時$f$を見つけることだ。
例えば、CT撮影の場合、$Af$はラドン変換 $\mathcal{R}f$であり、CTスキャナーが放射線を我々の体を透過させて得たデータを意味し、具体的には脳CTデータは以下の写真のようである。
もし、我々が逆変換の公式を導いたり、アルゴリズムを開発して上記のデータに適用し、次のような結果を得たとしよう。
しかし、逆変換の公式やアルゴリズムがうまく機能したかを我々は知ることができない。なぜなら、正解が我々の手にないからだ。見えない体の内部を知りたいために作られた公式なのに、これが実際にうまく計算されるかを確かめるには体の内部を見なければならないからだ。
そのため、数値的シミュレーション用のデータ$\mathcal{R}f$を作る時には、我々が正確に知っている(我々が人工的に作った)$f$から作る必要がある。そうすれば$\mathcal{R}^{-1}\mathcal{R}f$と$f$がどれだけ似ているかを確認することができるからだ。この時、このような$f$をファントムという。よく使われるファントムはSheppとLoganが提案したShepp-Loganファントム1で、これは脳の断面で現れる特徴を描写した図で、以下のようである。
これを$f$として$\mathcal{R}f$と$\mathcal{R}^{-1} \mathcal{R} f$を計算してみると、それぞれ次のようになる。