微分多様体上のイマージョンと埋め込み
定義1
$M^{m}, N^{m}$を$m, n$次元の微分多様体、$\phi : M \to N$を微分可能な関数としよう。
全ての点$p \in M$での微分$d\phi_{p}$が一対一関数ならば、$\phi$をイマージョンimmersion, 没入と言う。
$\phi$がイマージョンであり、かつ同相ならば、$\phi$をエンベディングembedding, imbeddingと言う。
包含関数$i : M \subset N$がエンベディングならば、$M$を$N$の部分多様体submanifoldと言う。
説明
定義により$\phi : M^{m} \to N^{n}$がイマージョンならば$m \le n$であり、これらの差$n-m$をイマージョン$\phi$の余次元codimensionと言う。
全てのイマージョンは局所的にはエンベディングとなる。
例2
微分可能ではない
$$ \begin{align*} \alpha : \mathbb{R} &\to \mathbb{R}^{2} \\ t &\mapsto (t, \left| t \right|) \end{align*} $$
$\alpha$は$t=0$で微分可能ではない。
微分可能だけど、イマージョンではない
$$ \begin{align*} \alpha : \mathbb{R} &\to \mathbb{R}^{2} \\ t &\mapsto (t^{3}, t^{2}) \end{align*} $$
$\alpha$は全ての点で微分可能だ。しかし、微分を計算してみると、
$$ d\alpha_{t} = \begin{bmatrix} 3t^{2} \\ 2t \end{bmatrix} $$
となるから、$t=0$で$d\alpha_{0} =\begin{bmatrix} 0 \\ 0 \end{bmatrix}$である。なので、一対一変換ではないため、$\alpha$はイマージョンではない。
イマージョンだけど、エンベディングではない1
$$ \begin{align*} \alpha : \mathbb{R} &\to \mathbb{R}^{2} \\ t &\mapsto (t^{3}-4t, t^{2}-4) \end{align*} $$
$\alpha$は全ての点で微分可能で、$d\alpha_{t} = \begin{bmatrix} 3t^{2}-4 \\ 2t \end{bmatrix}$は全ての$t$で$\begin{bmatrix} 0 \\ 0 \end{bmatrix}$と等しくなく、だからイマージョンである。しかし、$\alpha (2)= (0,0) = \alpha (-2)$だから、$\alpha$は同相ではない。なので、$\alpha$はエンベディングではない。
イマージョンだけど、エンベディングではない2
$$ \alpha : (-3,0) \to \mathbb{R}^{2} $$
$$ \alpha (t) = \begin{cases} (0, -(t+2)), & t \in (-3, -1) \\ \text{regular curve (see figure)}, & t \in (-1, -\frac{1}{\pi}) \\ (-t, \sin\frac{1}{t}), & t \in (-\frac{1}{\pi}, 0) \end{cases} $$
この時、$\alpha (-\frac{1}{\pi}, 0)$は位相幾何学者のサイン曲線のグラフだ。与えられた$\alpha$はイマージョンである。しかし、$\alpha^{-1}$を考えると、$x$軸の座標が$0$に近づくにつれて、非常に速く振動するため、ある区間$\color{red}I$に対して、開集合$U$を選べなくなる。なので、$\alpha$はエンベディングではない。
エンベディング
$\mathbb{R}^{3}$の曲面$M$を考えよう。すると、座標チャート$\mathbf{x} : U \subset \mathbb{R}^{2} \to M$はエンベディングとなる。