シルバー・ミュラー放射条件シルバー・ミュラー放射条件
定義
Eを電気場としよう。次の式をシルバー・ミュラー放射条件Silver-Mueller radiation conditionという。x∈R3,r=∣x∣の時、
r→∞limr[(∇×E)×x−rE]=0
説明
シルバー・ミュラー放射条件は、電磁波の散乱問題で電磁波が満たすべき必要条件である。
説明
ゾンマーフェルト放射条件は、ヘルムホルツ方程式の物理的に可能な解が満たすべき条件として、1912年にドイツの物理学者ゾンマーフェルトが論文Die greensche Funktion der Schwingungsgleichung(振動方程式のグリーン関数)を通じて提案したものである。言い換えれば、ヘルムホルツ方程式の解がゾンマーフェルト放射条件を満たさない場合、実際に意味がないとされる。
この条件は、波が波源から離れなければならないことを意味している。つまり、波は前進のみして、戻ってはならないということだ。湖に石を投げる場面を想像してみよう。すると、石が湖に落ちたその地点を中心に、波紋が広がるだろう。実際には、波紋が突然Uターンして中心方向に逆戻りすることは決してないとわかる。
ゾンマーフェルト放射条件は、上記のシナリオを満たすように解に制約を加えるものだ。あるu(x)が数学的にはヘルムホルツ方程式の解になるかもしれないが、それが逆方向に動く波を描写する関数であれば、物理的な意味を持たない。この条件を簡単な場面で実際に適用してみよう。
例示
u(r)を[球面波]とすると、次の2つの解がヘルムホルツ方程式Δu+k2u=0の解となる。
u(r)=re±ikr
代入してみると、簡単に確認できる。球面座標系でのラプラシアンは以下の通りだ。
∇2u=Δu=r21∂r∂(r2∂r∂u)+r2sinθ1∂θ∂(sinθ∂θ∂u)+r2sin2θ1∂2ϕ∂2u
uが球面波とされているので、角度には関係なく、ラプラシアンでは半径に関する項のみ残る。
∇2u=Δu=r21drd(r2drdu)=r2drdu+dr2d2u
ここで、ヘルムホルツ方程式に(1)を代入すれば、解であることがわかる。
======Δu+k2u r2drdu+dr2d2u+k2u r2drd(re±ikr)+dr2d2(re±ikr)+k2(re±ikr) (±2ikr2e±ikr−2r3e±ikr)+drd(±ikre±ikr−r2e±ikr)+k2re±ikr (±2ikr2e±ikr−2r3e±ikr)+(−k2re±ikr∓ikr2e±ikr∓ikr2e±ikr+2r3e±ikr)+k2re±ikr (±2ikr2e±ikr−2r3e±ikr)+(−k2re±ikr∓ikr2e±ikr∓ikr2e±ikr+2r3e±ikr)+k2re±ikr 0
この文脈では、複素波動関数の中でu+(r)=reikrはrが増加する方向へ進行する波であり、u−(r)=re−ikrはrが減少する方向へ進行する波だ。したがって、u+はまっすぐ進む波、u−は逆方向に進む波を意味する。u+だけが放射条件を満たす場合、放射条件が物理的な解の性質をよく説明していると言える。次のように確認できる。
r→∞limr(drdu+−iku+)====== r→∞limr(drdreikr−ikreikr) r→∞limr(ikreikr−r2eikr−ikreikr) r→∞limr(−r2eikr) r→∞lim−reikr −r→∞limrcoskr+isinkr 0
したがって、u+は放射条件を満たす。
r→∞limr(drdu−−iku−)====== r→∞limr(drdre−ikr−ikre−ikr) r→∞limr(−ikre−ikr−r2e−ikr−ikre−ikr) r→∞lim(−2ike−ikr−re−ikr) r→∞lim(−2ike−ikr)−r→∞lim(re−ikr) r→∞lim(−2ike−ikr) −2ikr→∞lim(coskr−isinkr)
上記の式が発散するので、u−は放射条件を満たさない。