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行列のランク、零化次元 📂行列代数

行列のランク、零化次元

要旨1

行列$A$の行空間列空間次元は同じである。

証明

$R$を$A$の行階段形行列とする。基本的な行操作は$A$の行空間と列空間の次元を変えないため、次の式が成立する。

$$ \begin{align*} \dim \big( \mathcal{R}(A) \big) &= \dim \big( \mathcal{R}(R) \big) \\ \dim \big( \mathcal{C}(A) \big) &= \dim \big( \mathcal{C}(R) \big) \end{align*} $$

従って、$R$の行空間と列空間の次元が同じであることを示せば十分である。しかし$R$の行空間は先頭1がある行、$R$の列空間は先頭1がある列で生成されるため、$R$の行空間と列空間の次元は同じである。

定義

行列$A$の行空間(列空間)の次元を ランクrankといい、次のように表示する。

$$ \text{rank}(A) = \dim \mathcal{R}(A) = \dim \mathcal{C}(A) $$

行列$A$の零空間の次元を 無効次元nullityといい、次のように表示する。

$$ \text{nullity}(A) = \dim \mathcal{N}(A) $$

説明

ランクは係数、無効次元は劣化次元と訳されることもある。

一方で$\text{rank}(A)$は、$A$を行階段形にしたときのピボットの数としても定義することができる。

正方行列でない$m \times n$の行列$A$を考えると、行空間は最大で$n$次元、列空間は最大で$m$次元になる。しかし、これら2つの値が同じで、それがランクであるため、次の式が成立する。

$$ \rank(A) \le \min(m,n) $$

$\rank(A) = \min(m,n)$の場合、$A$がフルランクfull rankを持っていると言われる。フルランクを持たない場合はランク不足rank deficientと言われる。

直感的に理解が難しい場合は、連立方程式の未知数を数えることから導き出された概念と考えると良い。定義自体は全く難しくないが、$ m \ne n$の場合、特に零空間や係数、劣化次元などの概念が原書で学んだ人には意味を推測するのが非常に難しいレベルである。これらの概念を学ぶ理由は、後に続く線形代数学の応用を数学の言葉で簡単に表現するためである。複雑な理論が展開されるとき、列空間や零空間などの定義は相当な面積を節約し、より複雑な現象をカバーしてくれる。

ちなみに列空間は$\text{Im} (A)$、つまりimageとも呼ばれる。行列$A$を関数の概念として考える場合、それは$A \in \mathbb{R}^{m \times n}$に対応する関数$T_{A}$を$T_{A} : \mathbb{R}^{n} \to \mathbb{R}^{m}$としても見ることができる理由である。

以下のランク-無効次元定理も、関数の概念として考えると理解が容易である。$\text{rank} A = \text{rank} A^{T}$であることを忘れないでください。

ランク-無効次元定理

行列$A \in M_{ m \times n }(\mathbb{R})$に対して、次の式が成立する。

$$ \begin{align*} \text{rank} (A) + \text{nullity} (A) &= \dim \mathbb{R}^{n} = n \\ \text{rank} (A^{T}) + \text{nullity} (A^{T}) &= \dim \mathbb{R}^{m} = m \end{align*} $$


行列の次元定理とも呼ばれる。線形変換について一般化すると、次のようになる。

ベクター空間$V, W$と線形変換$T : V \to W$に対して、次の式が成立する。

$$ \text{rank} (T) + \text{nullity} (T) = \dim (V) $$

証明

$A$を$m \times n$行列とする。すると、$A$の列が$n$個であるため、斉次線形システム$A \mathbf{x} = \mathbf{0}$は$n$個の未知数を持つ。従って、「先導変数の数 + 自由変数の数 = $n$」が成立する。先導変数の数は先導1の数と同じであり、これは行空間の次元と同じである。また、自由変数の数はパラメータの数と同じであり、これは零空間の次元と同じである。したがって、定理が成立する。

関連する話題

抽象代数学における核

零空間は$\ker A$と表され、Kernelとも呼ばれる。これは抽象代数学で扱われる一般的な核の概念を線形代数で特殊化した表現であり、これもまた$A$を関数として見ることに由来する。


  1. Howard Anton, Elementary Linear Algebra: Applications Version (12th Edition, 2019), p278 ↩︎