直交行列
定義
$A$を正方実数行列としよう。$A$が下の式を満たす場合、直交行列orthogonal matrixという。
$$ A^{-1} = A^{T} $$
この条件を別の形で表すと次のようになる。
$$ AA^{T} = A^{T}A =I $$
説明
定義を言葉で解くと、直交行列とは、それぞれの行ベクトルまたは列ベクトルが互いに直交する単位ベクトルである行列だ。複素数行列に拡張した場合は、ユニタリ行列と呼ばれる。直交行列の具体的な例には、回転行列がある。2次元平面上のベクトルを反時計回りに$\theta$だけ回転させる変換は以下のようになる。
$$ A = \begin{bmatrix} \cos \theta & -\sin \theta \\ \sin \theta & \cos \theta \end{bmatrix} $$
下の式により、回転変換は任意の$\theta$に対して直交行列であることがわかる。
$$ A^{T} A = \begin{bmatrix} \cos \theta & -\sin \theta \\ \sin \theta & \cos \theta \end{bmatrix} \begin{bmatrix} \cos \theta & \sin \theta \\ -\sin \theta & \cos \theta \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{bmatrix} = I $$
性質
直交行列の転置も直交行列である。
直交行列の逆行列は直交行列である。
二つの直交行列の積は直交行列である。
直交行列の行列式は$1$または$-1$である。
$$ \det(A)=\pm 1 $$
直交行列の同値条件
$n \times n$実数行列$A$について、以下の命題はすべて同値である。
$A$は直交行列である。
$A$の行ベクトルの集合は$\mathbb{R}^n$の正規直交集合である。
$A$の列ベクトルの集合は$\mathbb{R}^n$の正規直交集合である。
$A$は内積を保存する。つまり、すべての$\mathbf{x},\mathbf{y}\in \mathbb{R}^{n}$に対して以下が成り立つ。
$$ (A \mathbf{x}) \cdot (A\mathbf{y}) = \mathbf{x} \cdot \mathbf{y} $$
- $A$は長さを保存する。つまり、すべての$\mathbf{x}\in \mathbb{R}^{n}$に対して以下が成り立つ。
$$ \left\| A \mathbf{x} \right\| = \left\| \mathbf{x} \right\| $$