平均がゼロの正規分布に従う確率変数のべき乗の期待値
📂確率分布論平均がゼロの正規分布に従う確率変数のべき乗の期待値
公式
確率変数 X が 正規分布 N(0,σ2) に従うとすると、その累乗 Xn の 期待値 は次のように再帰的な公式で表される。
E(Xn)=(n−1)σ2E(Xn−2)
E(Xn) は n が奇数のとき 0 であり、偶数のときは以下の通りである。
E(X2n)=(2n−1)!!σ2n
ここでビックリマークが二つ入った k!!=k⋅(k−2)⋯ は 二重階乗 を示す。
説明
広く知られる系として E(X4)=3σ4 が成立し、これは 伊藤の公式の導出 などに利用できる。
導出
結果を得る二つの方法がある。ガウス積分を用いる方式は一般化された公式を通じたショートカットであり、導出が簡単で速い。部分積分を用いる方式は多少難解だが、その過程で再帰公式も得ることができる。どちらの方法も次のように E(Xn) を積分で解くことから始まる。
E(Xn)=∫−∞∞2πσ1xne−x2/2σ2dx
ガウス積分を利用した方式
ガウス積分の一般化: n が 自然数 としよう。
∫−∞∞x2ne−αx2dx=∫−∞∞x2n+1e−αx2dx=n!22n(2n)!α2n+1π0
連続した奇数の積: 整数 n≥0 に関して次が成立する。
(2n−1)⋅(2n−3)⋯5⋅3⋅1=2n(n!)(2n)!=(2n−1)!!
n が奇数なら公式によってすぐに E(Xn)=0 である。n が偶数なら α=1/2σ2 を代入して次を得る。
E(X2n)======2πσ1∫−∞∞x2ne−x2/2σ2dx2πσ1n!22n(2n)!π22n+1σ4n+2n!2n2n(2n)!22nσ4nn!2n2n(2n)!2nσ2nn!2n(2n)!σ2n(2n−1)!!σ2n
部分積分を利用した方式
In:=∫−∞∞tne−t2/2dt
In を上記のようにおき、部分積分法 を使おう。この部分は多少難解である。
−In====−∫−∞∞tne−t2/2dt∫−∞∞tn−1⋅2−2te−t2/2dt[tn−1⋅e−t2/2]−∞∞−∫−∞∞(n−1)tn−2e−t2/2dt0−(n−1)In−2
整理すると In=(n−1)In−2 であり、これを E(Xn) を計算する過程に適用する。t=x/σ と置換すると dx=σdt になるので
E(Xn)========∫−∞∞2πσ1xne−x2/2σ2dx∫−∞∞2πσ1(σt)ne−t2/2⋅σdt2πσn∫−∞∞tne−t2/2dt2πσnIn2πσn(n−1)In−2(n−1)2πσ2⋅σn−2∫−∞∞tn−2e−t2/2dt(n−1)σ2∫−∞∞2πσn−2tn−2e−t2/2dt(n−1)σ2E(Xn−2)
を得る。X は平均が 0 の正規分布と仮定したので E(X1)=0 であり、すべての奇数 n に対して E(Xn)=0 である。偶数については再帰公式を展開することにより次の結果を得る。
E(X2n)==⋮==(2n−1)σ2E(X2n−2)(2n−1)σ2⋅(2n−3)σ2E(X2n−4)[(2n−1)(2n−3)⋯1]σ2(n−1)E(X2)(2n−1)!!σ2n
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