算術平均と幾何平均、調和平均の間の不等式
📂レンマ算術平均と幾何平均、調和平均の間の不等式
定義
n 個の正数 x1,x2,⋯,xn に対して算術平均、幾何平均、調和平均は以下のように定義される。
- 算術平均 :
k=1∑nnxk=nx1+x2+⋯+xn
- 幾何平均 :
k=1∏nxkn1=nx1x2⋯xn
- 調和平均 :
(n∑k=1nxk1)−1=x11+nx21+⋯+nxn1n
定理
これらの平均に対して、次の不等式が成り立つ。
nx1+x2+⋯+xn≥nx1x2⋯xn≥x11+nx21+⋯+nxn1n
説明
高校生であれば、算術・幾何平均について一度は耳にするかもしれないが、特定の名称で定義されることはあまりなく、通常は「算術幾何」という略称で口伝えにされることが一般的である。n=2 の場合には証明も簡単で、高校レベルの問題解決にも役立つ。高校生レベルで一般的な証明には複雑な式を使った数学的帰納法を用いる必要があるが、より洗練されたが難しい証明を紹介する。
証明
戦略:次の補助定理を利用する。
ジェンセンの不等式:
f が 凸関数 で、E(X)<∞ の場合、以下の不等式が成り立つ。
Ef(X)≥fE(X)
算術-幾何
f(x)=−lnx とすると、f は区間 (0,∞) で凸関数である。確率変数 X が確率質量関数
p(X=x)={n10,x=x1,x2,⋯,xn,その他の場合
を持つとする。すると E(X) は
nx1+x2+…+xn<∞
であり有限である。これはジェンセンの不等式に必要な全ての条件を満たすため、次を得る。
E(−lnX)≥–lnE(X)
左辺は
E(−lnX)=−E(lnX)=−n1k=1∑nlnxk=−n1lnk=1∏nxk=−ln(k=1∏nxk)n1=−lnk=1∏nxkn1
右辺は
−lnE(X)=−lnn1k=1∑nxk
この両者を定理すると
−lnk=1∏nxkn1≥⟹lnn1k=1∑nxk≥⟹n1k=1∑nxk≥⟹nx1+x2+…+xn≥−lnn1k=1∑nxklnk=1∏nxkn1k=1∏nxkn1nx1x2…xn
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これにより、算術平均と幾何平均の間の不等式が証明された。これを用いて、幾何平均と調和平均の間の不等式を証明しよう。
幾何-調和
nx1+x2+…+xn≥nx1x2…xn
xk=nyk1 と置くと、
nny11+ny21+…+nyn1≥nny11ny21…nyn1⟹nnny11ny21…nyn11≥nny11+ny21+…+nyn1n⟹ny1y2…yn≥nny11+ny21+…+nyn1n
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