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抽象代数学におけるモノイド 📂抽象代数

抽象代数学におけるモノイド

定義 1

半群$\left< M , \ast\ \right>$において、全ての元$a$に対して、$a \ast\ e = e \ast\ a = a$を満たす$e$が存在するなら、$\left< M , \ast\ \right>$をモノイドmonoidと定義する。そして、このような$e$を恒等円identityと呼びます。

説明

モノイドは恒等元が存在する半群だ。恒等元という概念を導入することで、話せることが格段に増える。半群でありながらモノイドにならない典型的な例を見てみよう。

半群$\left< \mathbb{N} , +\right>$はモノイドではない。

  • 任意の自然数$a$に対して恒等元$ e$が存在して$a + e = a$を満たすと仮定する。

$e$は$1$以上の自然数だから、$a + e \ge a + 1$が成り立つ。一方で$a + 1 > a$であるから、$a + e > a$となり、これは仮定に矛盾する。

このように自然に反証できる例があるということは、恒等元の存在が必ずしも自明ではないとも言えるだろう。

定方行列の集合$\mathbb{R}^{n \times n}$について、$\left< \mathbb{R}^{n \times n} , \cdot \right>$はモノイドだ。

  • 行列の積の定義に従って、$\left< \mathbb{R}^{n \times n} , + \right>$が半群になることは容易に示せる。一方、単位行列$I_{n}$と任意の行列$( a_{ij} )$を考えると、$a_{ij} \cdot 1 = a_{ij}$および$a_{ij} \cdot 0 = 0$だから$(a_{ij}) I = I (a_{ij}) = (a_{ij})$となる。したがって、$I$は$\left< \mathbb{R}^{n \times n} , \cdot \right>$の恒等元になる。


  1. Fraleigh. (2003). A first course in abstract algebra(7th Edition): p42. ↩︎