正定行列の主対角成分の性質
📂行列代数正定行列の主対角成分の性質
定理
正定値行列 A=(aij)∈Cn×n が与えられていると仮定する。
主対角成分の符号
A の 主対角成分 aii の符号は A の符号と同じである。
- A が正定値の場合 aii>0
- A が正準定値の場合 aii≥0
- A が負定値の場合 aii<0
- A が負準定値の場合 aii≤0
対称実数行列における 0 な主対角成分
実数で成り立つ準定値行列 A∈Rn×n が 対称行列 であると仮定する。 A の主対角成分 aii が 0 であれば i 番目の行と列は 零ベクトル である。
説明
この性質は ハーグ=クレイグの定理の証明 に使用される。
証明
一般性を失わず、 A が正準定値であると仮定する。
行列 A が正準定値であるということは、すべての ベクトル x∈Rn に対して xTAx≥0 であるから、 標準基底ベクトル x=e1,⋯,en に対しても 二次形式が 0 以上でなければならない。 eiTAei≥0 なので、 A のすべての主対角成分 (A)ii も 0 以上でなければならない。
ここで A が A∈Rn×n であり対称行列であると仮定し、ある実数 x とインデックス j=i に対し x:=ei+xej とする。もし aii=0 が 0 であれば、 xTAx≥0 なので次が成り立つ。
====≥xTAx(ei+xej)TA(ei+xej)eiTAei+xeiTAej+xejTAei+x2ejTAejaii+xaij+xaji+x2ajj2xaij+x2ajj0
解の公式: 二次方程式 ax2+bx+c=0(ただし、a=0)に対して
x=2a−b±b2−4ac
A が正準定値行列であると仮定したので ajj≥0 である。 2xaij+x2ajj≥0 というのはこの二次関数 f(x)=ajjx2+2aijx のグラフが 下に凸な放物線 で x-軸に接しないか一点でのみ交わること、つまり判別式を見た場合 b2−4ac≤0 であることを意味する。 f を判別式に代入してみると次のようになる。
(2aij)2−4⋅ajj⋅0≤0
これによれば 4aij2≤0 を満たす場合は aij=0 だけである。これは j の選択に関係なく成り立つので ai1=⋯=ain=0 であり、 A は対称行列であるから a1i=⋯=ani=0 でもある。
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