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動力学におけるベクトル場の法線形 📂動力学

動力学におけるベクトル場の法線形

定義

p(x;r)p(x;r) がある多項式関数としましょう。 x˙=p(x;r) \dot{x} = p(x; r) 動力学系の性質を説明するために、上記のように簡略化されたベクトル場ノーマルフォームnormal formと言います。

説明

動力学を学ぶ際、例えばカオスバイフケーション、フラクタルなどについて学んでいくうえで困難なのは、数学的な厳密さや一般性が不足しているように感じられることです。それが学んでいる自分が学んだことがないからそう見えるだけなのか、実際にそのような曖昧さが存在するのかというのは別として、「例」を中心に「現象」から学んでいくという点がかなり戸惑うことがあります。通常の数学の本であれば、定義から始まり、関連する定理が出てきて、その証明を見て、例を見て、練習問題を解くという流れですが、その順序が入り組んでいて戸惑うことがあります。

ノーマルフォームは決して難しくはなく、目的に応じて実際には一連の探求を容易にする要素であるにもかかわらず、「学習する立場」からは、むしろ上で述べた混乱を増大させる原因の一つとなることがあります。

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x˙=rx2 \dot{x} = r - x^{2} 例として、サドル・ノードバイフケーションについて説明する際は、上記のような微分方程式で説明されることがあります。ベクトル場自体が変化するのはr=0r = 0 の近傍で起こることで、r>0r > 0 のときは2つの固定点 x=±rx = \pm \sqrt{r} が存在し、r=0r = 0 のときはx=0x = 0 1つだけで、r<0r < 0 のときは存在しない。明らかにr=0r = 0 はバイフケーションポイントであり、このように2つの固定点がサドルノードになって消える現象を「サドル・ノードバイフケーション」と呼ぶのは良いです。しかし、これはサドル・ノードバイフケーションを説明する一つの例に過ぎず、x˙=rx2\dot{x} = r - x^{2} 自体がその全てではないため、「数学的直観」と正面から衝突します。数学者であれば、誰もがサドル・ノードバイフケーションを明確に定義し、その一般化された形について知りたいと思うでしょうが、通常は次々と例が提示され、それについての説明が省略されます。

しかし、ここに別のサドル・ノードバイフケーションの例があります。 x˙=(rx)ex \dot{x} = (r-x) - e^{-x} 幾何学的に見ると、システムの右辺は直線 x˙=rx\dot{x} = r-x指数関数カーブ x˙=ex\dot{x} = e^{-x} の和として表されます。これらがいくつかの点で交わるかによって、固定点の数が変わります。 このシステムは、式的な形は少し異なりますが、先に説明したサドル・ノードバイフケーションを示しています。少なくともバイフケーションの観点から、このシステムはx˙=rx2\dot{x} = r - x^{2} と大きく異なるものではなく、実際にx=0x = 0 の近傍でexe^{-x} のテイラー展開を考えると x˙=rxex=rx(1x+x22+)=(r1)x22+O(x3) \begin{align*} \dot{x} =& r - x - e^{-x} \\ =& r - x - \left( 1 - x + {{ x^{2} } \over { 2 }} + \cdots \right) \\ =& (r - 1) - {{ x^{2} } \over { 2 }} + O \left( x^{3} \right) \end{align*}

と表すことができます。このように、x˙=(rx)ex\dot{x} = (r-x) - e^{-x} のようなサドル・ノードバイフケーションの例がどれだけあっても、最も単純な形で表されたものをバイフケーションに対するノーマルフォームnormal form for bifurcationと言い、このときx˙=rx2\dot{x} = r - x^{2} を単なる一つの例として見るのではないのです。

関連項目


  1. Strogatz. (2015). Nonlinear Dynamics And Chaos: With Applications To Physics, Biology, Chemistry, And Engineering(2nd Edition): p48~50. ↩︎