正定値半不定行列と拡張されたコーシー・シュワルツの不等式の証明
📂行列代数正定値半不定行列と拡張されたコーシー・シュワルツの不等式の証明
定理
任意の二つのベクトルb,d∈Rpと正定値行列A∈Rp×pに対して、以下の不等式が成立する。
(bTd)2≤(bTAb)(dTA−1d)
これが等式になる同値条件はある定数c∈Rに対してb=cA−1dまたはd=cAbとして表されることである。
説明
この不等式はコーシー・シュワルツの不等式の一般化であり、Aが恒等行列Iのとき元のコーシー・シュワルツの不等式と同じになる。不等式の右辺に二次形式が登場し、自然に数理統計学での応用範囲が広い。
証明
Part 1. 不等式
正定値行列の逆行列と平方根行列: 正定値行列Aの固有対{(λk,ek)}k=1nがλ1>⋯>λn>0の順で整列されているとする。直交行列P=[e1⋯en]∈Rn×nと対角行列Λ=diag(λ1,⋯,λn)に関してAの逆行列A−1と平方根行列Aは以下のようになる。
A−1=A=PΛ−1PT=k=1∑nλk1ekekTPΛPT=k=1∑nλkekekT
Aが正定値行列ならばその平方根行列は
A=PΛPT=k=1∑nλkekekT
となり、従って転置行列であるからA1/2=(A1/2)Tが成立し、同じ理由でA−1も転置行列である。
x:=A1/2bとy:=A−1/2dとすると元のコーシー・シュワルツの不等式(xTy)≤(xTx)(yTy)に従って
=====≤≤=(bTd)2(bTA1/2A−1/2d)2(bT(A1/2)TA−1/2d)2((A1/2b)TA−1/2d)2((A1/2b)TA−1/2d)2(xTy)2(xTx)(yTy)((A1/2b)T(A1/2b))((A−1/2d)T(A−1/2d))(bTAb)(dTA−1d)
として一般化できる。
Part 2. 等式
ある定数がc=0であればb=0またはd=0で等式が自明に成立する。両方がゼロベクトルでなく、一般性を失わずにd=cAbと仮定すると
bTd==bTcAbcbTAb
も成立し
bTd==(c1A−1d)Tdc1dTA−1d
も成立する。これによって得られた二つの式の両端を乗じると次の等式を得る。
(bTd)2=(bTAb)(dTA−1d)
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