エルミート行列のロワーナー順序
📂行列代数エルミート行列のロワーナー順序
定義
ロウナー順序
二つの行列 A,B∈Cn×n が エルミート行列であるとする。(A−B) が 半正定値ならば A≥B のように表し、(A−B) が正定値ならば A>B のように表す。このような部分順序 ≥、> をロウナー順序Loewner orderという。
説明
よく考えるスカラーとは違い、実際には複素数でさえもその間に自然な順序を定義することは簡単ではない。特に行列の場合、成分がはるかに多いため、これらの有効な順序を定義することは困難であるが、行列の正定値が行列にある種の符号を付けるという点で、行列に順序を付けることができるようになる。
定理
Hn:=Pn:=Pn:={A∈Cn×n:A=A∗}{A∈Cn×n:x∗Ax>0}{A∈Cn×n:x∗Ax≥0}
エルミート行列のベクトル空間 Hn の正定値行列の集合を Pn とするとき、半正定値行列の集合を Pn のように表す。Pn は ≥ に対して部分順序集合だが、全順序集合にはなり得ない。
証明
反例を示すことで十分である。
A:=B:=[1000][0001]
上のように与えられた二つの行列 A,B は半正定値行列であるが、
A−B=B−A=[100−1][−1001]
任意のベクトル (x1,x2)∈R2 に対してその二次形式が常に常に x12−x22 の形になってすべて半正定値になるわけではない。この場合 A>B、B>A が共に成立しないので、Pn は全順序集合にはならない。
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